◆A型肝炎ウイルス[Hepatitis A virus : HAV]

 ヘパドナウイルス(科)*のRNAウイルス*で流行性ウイルス性肝炎の原因ウイルスである。ウイルスは直径が27nmの小型の球形ウイルスで、ウイルス核酸は1本鎖線状プラスRNAである。肝炎ウイルスのなかで例外的にA型肝炎ウイルスは、ヒトとサルの培養細胞で増殖する。細胞を破壊しせず(CPEを示さない)、ウイルスの分離には二ヶ月近い培養時間を要する。ウイルスは、60 ℃でも失活しない耐熱性で乾燥にも強いが、塩素などのハロゲン化消毒薬に感受性があり1〜2ppmの遊離塩素、紫外線照射、ホルマリンで容易に失活する。ウイルスの伝播は、主として糞便を介して食物、飲料水からの経口感染により感染する。非常に希ではあるが経皮感染も報告されている。発熱、全身性倦怠感を初症状として発症し、遅れて黄疸がみられる急性肝炎である。トランスアミナ−ゼの異常期間が感染期間であり、ウイルスは感染初期に一過性に血中や糞便中に排泄される。ウイルス検査は血中の抗体検査を行う。B型肝炎に比べ経過が短く、一般的に慢性化するものはない。1%ていどが劇症肝炎に移行し、その場合は予後は悪い。ワクチンが確立されている。ウイルスの診断は、抗体価測定によりおこなう。