◆塩素殺菌 [Chlorine sterilization,Chlorination]

 酸化力が強い塩素または塩素化合物による殺菌(消毒)である。その対象物はおもに用水(飲料水、飼育水など)や種々の廃水であるが、ときには食品などを扱う容器や製造用器物にも用いられる。塩素殺菌には液体塩素、次亜塩素酸ナトリウム液、晒し粉(消石灰に塩素を作用させた粉末:クロルカルキ)、クロロイソシアヌール酸塩、クロラミン Tなどが用いられる。
塩素は一般細菌やウイルスの殺菌・不活化に比較的低濃度(塩素量:0.1ppm)で有効であるが、芽胞を形成する細菌やかびに対しては高濃度で長時間処理が必要である。上水道では注入塩素が10分後に殺菌力をもつ量として0.1-0.2ppm以上になるように規定されている。
一般に無機塩素の場合は塩素と水で生じる次亜塩素酸イオン、または次亜塩素酸塩の分解で生じる酸素の酸化作用によって微生物が殺滅される。しかし、その効果は水中の溶存物質や浮遊物、温度、pHなどの環境要因によって左右される。したがって、溶存塩素量が多いほど殺菌効果が強い。一方、水に対する溶解度が高いため、残留塩素による臭気や共存する有機物によっては発癌性のトリクロロメタン(trichloromethane)が生じることなどが問題である。また、誤って塩素系殺菌剤と合成洗剤を併用した場合には、致死性の有毒ガスが発生することがあるので充分注意する必要がある。これらの欠点を補う殺菌法として近年用いられるようになったオゾン殺菌がある。

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