◆塩蔵食品 [Salted food]

 野菜類、肉類、魚介類、海藻類などに多量の食塩を加えて、その脱水作用あるいは高浸透圧作用によって腐敗あるいは変敗を防いで、長期間の貯蔵ができるようにした、いわゆる「塩漬品」が多い。塩蔵には原料食品に直接食塩を振りかけ容器内に堆積(詰める)する方法(振塩漬法)と、原料食品を高濃度の食塩水に浸漬して貯蔵する方法(立塩漬法)がある。食塩量は原料の40%程度がよく用いられるが、最近は15-20%の食塩量にした塩蔵品もある。各種の野菜や肉類のほか、魚類ではおもにサケ・マス類、タラ、ニシン、サバ、イワシ、魚卵などが塩蔵されるが、"塩辛"は魚介類の内臓、卵、白子、筋肉などに20-30%の食塩を加えて浸漬して、原料や好塩細菌中の酵素(おもにタンパク質分解酵素)による分解で生じたアミノ酸などで独特のうま味や風味をつけたもので、「あん醤品」ともいわれる食品の一つである。塩辛にはイカの筋肉や内臓(いかの塩辛)、カツオの内臓(酒盗)、アユ(うるか)、サケ・マス類の腎臓(めふん)、ウニの生殖腺(うにの塩辛)、ナマコの腸(このわた)などがある。また、"いずし"など"なれずし"とよばれる独特の地方食品がある。これは塩漬した魚介類を米飯とともに長期間漬けこんで、米飯(デンプン)の発酵で生じる乳酸などによって風味をつけ、保存性をよくした食品であるから、"なれずし"は発酵食品の一つでもある。そのほかに、伊豆諸島でつくられる"くさや"も塩蔵食品の一つであるが、これはムロアジやトビウオを血抜きしたあと、何代にもわたって使用される"くさや汁"(食塩濃度は3-5%程度)に一夜浸漬して乾燥させてつくられるので、独特の臭いと風味がある特殊な「塩干品」である。
 塩蔵は一般細菌による食品の腐敗・変敗を防ぐ良い方法で、食品工業や家庭で広く用いられているが、好塩細菌の増殖による品質低下(強好塩細菌は塩蔵 タラの赤変現象の原因として発見された)や、ときには腸炎ビブリオなどの好塩性病原菌による食中毒の原因となる(この食中毒は魚介類による例が最も多い)ので製造や保存上注意する必要がある。

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