◆ブリの膵肝壊死症(腹水症)ウイルス
   [Yellowtail ascites virus (YAV) ]

 膵肝壊死症は"腹水症"ともよばれ、1980年頃から西日本各地(三重県から九州)の沿岸で養殖ブリの稚魚に腹部が膨れる病気として知られるようになり、ときにはかなりの被害をもたらした。5月から7月にかけて水温が20゚C前後になると発生しやすいが、水温が高くなり、ブリが成長するにつれて流行も治るからあまり問題にはされない。しかし、人工的に孵化(ふか)させた種苗に発生したこともあるので無視できないウイルス病である。
おもに鰓(えら)から感染すると考えられ、病魚の体色が黒くなり水から揚げると黄金色になることが特徴である。また、腹部が膨張し眼球が飛びだし鰓も褪色する場合が多い。臓器の中では膵臓が最も冒されやすく、組織が壊死(えし)して崩れる。多くの場合は肝臓にも鬱血(うっけつ)や出血がありその細胞が壊死する。
原因ウイルスはビルナウイルス科に属し、大きさは直径約65nmでエンベロープ(外被)をもたず2本鎖のRNAをもっている。20-30℃でよく増殖するが、35℃では失活する。このウイルスはサケ科魚類の伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)に似ているが血清型では区別されている。養殖魚や天然魚が感染源と考えられているが、今のところ有効な防除法がない。

関連 壊死(えし)
関連 鬱血(うっけつ)
関連 ビルナウイルス科
関連 エンベロープ
関連 サケ科魚類の伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)
関連 血清型