◆破傷風菌 [Clostridium tetani]

 1889年北里柴三郎がドイツのローベルト・コッホ研究室で世界ではじめて嫌気培養法を考案して破傷風の原因菌である破傷風菌を単独で純培養に成功した。酸素のある状態では増殖できない、芽胞を持つ偏性嫌気性のグラム陽性桿菌で鞭毛を持ち運動性がある。芽胞は菌体よりも大きく、形態は“太鼓のバチ状”とか“マッチの軸状”と表現される。広く土壌中に分布し、通常、酸素のある時には芽胞の状態でいて、外傷や手術の時に傷口から生体内に侵入し環境が嫌気的になると栄養型に変って増殖し、破傷風毒素と呼ばれる強力な外毒素を産生する。北里は、この細菌の産生する毒素を中和する抗体を馬などに作らせ、その馬の血清をヒトの破傷風の治療に用いる「血清療法」を確立した。この病気は毒素性の疾患で、細菌が産生する毒素を中和する事で予防できる。予め、生体に毒素を中和する為の抗体を作る能力を与えておく事が有効な予防法になる。外毒素を化学物質等で処理したトキソイド(toxoid;毒作用は持たないけれども、毒素を中和する抗体を作らせる事ができるように変性させた外毒素)を注射する。
 一般には破傷風と同じように外毒素が病気の原因になるジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)のトキソイドと混合し、更に抗体がより多くそして長く作られるようにする免疫賦活(アジュバント)作用を持つ百日咳菌(Bordetella pertussis)の菌体成分を加えた、DPT3種混合ワクチンが用いられる。このワクチンの接種効果は余り長くはないので、一定の期間が経過したら、またワクチンを接種する必要があります。
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