◆カンピロバクター[Campylobacter jejuni]

 グラム陰性のビブリオ状又はらせん状の桿菌で一端又は両端に鞭毛持ち活発に運動をする菌である。普通の好気性の状態よりも、炭酸ガス濃度が3〜10%の微好気的な状態の方が発育に適している菌である。古くからウシ、ヒツジ、ヤギなどの流産を起こす菌として知られていたが、分離されたのは比較的最近の1972年である。本来はウシやヒツジ、ブタなどのほか、ニワトリやイヌ、ネコが健康状態でも持っている細菌で、これらの動物の糞便で汚染された鶏肉やブタ肉などの食肉や水、生牛乳などを介してヒトにも感染を起こすので人畜共通伝染病の病原体でもある。 幾つかの菌種が知られているが、重要なのは、ジェジュニ菌(C. jejuni)、コリ菌(C. coli)とフェタス菌(C. fetus)である。 家畜では不顕性感染が多く、余り発症しないが、ヒトでは経口感染後3〜5日の潜伏期を経て、発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛を伴う嘔吐、頻回の下痢で発症する食中毒原因菌である。1982年に厚生省から食中毒起因菌として指定された。C. Fetusはヒツジやウシの流産の原因となる細菌であるが、ヒトでは敗血症、髄膜炎、心内膜炎などの全身感染を起こし、食中毒は起こさない。
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