◆魚病 [Fish diseases]

 一般に魚類の疾病を魚病といい、その原因は化学的原因と生物学的原因に分けられる。化学的原因としては生育環境水の化学的変化によるもので、おもに水中の酸素欠乏、過剰な溶存窒素または酸素による血流異常(ガス病)がある。また、環境汚染の原因となる溶存有毒物質による代謝障害や奇形および栄養分の過不足による栄養障害などがある。生物学的原因として種々の病原微生物による感染症や寄生虫病がある。魚病の中でも細菌、真菌(多くはかび)、原虫およびウイルスによる感染症は世界の水産業、とくに増養殖業に甚大な被害をもたらすので、最も重要視され多くの研究がなされてきた。
これらの魚病が発生する環境的な原因(間接的原因)としては
   (1)自然または人為的な海況や水質の物理・化学的変化
   (2)環境水の循環・流動の悪化
   (3)過密な増養殖による負傷や摂餌不足による栄養障害
   (4)過剰な投餌による環境水の富栄養化(過剰な有機物の溶存)や栄養過多
   (5)各種薬剤の過剰投与による薬害や耐性菌の出現
   (6)保菌卵や保菌魚の導入(防疫体制の不備)などが挙げられる。
このような種々の環境変化で魚類に異常をきたし、魚類の体表、鰓(えら)、口、肛門あるいは傷口などから病原体が感染して発病する。また、保菌親魚あるいは保菌卵などによる感染(垂直感染)や保菌幼魚や成魚による感染(水平感染)もある。感染した魚類は病原体によって種々の組織・器官に障害を受けてついには死亡する。そこで適切な処置がなされないと魚病はさらに他の魚へ伝染して被害が拡大する。
現在、魚病対策として上記のような環境悪化を防止する種々の方法や防疫処置がとられているが、一部の魚病を除いてワクチンなどによる予防法の開発は今後の課題として残されている。ほとんどの場合、抗生物質や合成化学療法剤あるいは殺菌剤や消毒剤による処置がなされている。しかし、今のところ、とくにウイルス感染症に対する的確な薬剤はなく、細菌感染症の場合も薬剤耐性菌の出現などが予防・治療対策を困難にしている。また、水産増養殖では技術的にも多量の環境水と多数の魚類が対象であるから、その対策も容易ではない。したがって、魚病を防止するには魚類の飼育環境をよくすることが先決である。

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