◆魚類のシュードモナス病菌 [Pseudomonas putida,Ps.fluorescens,Ps.chlororaphis]

 シュードモナス病は最初、高知県下で晩秋にブリに発生した細菌性魚病である。症状は皮膚の褪色、鰓蓋(えらぶた)の出血、鰭(ひれ)の糜爛(びらん)などで、ときには体表に膨隆が生じ潰瘍をつくることもある。ブリのほかタイにもみられ、ウナギの赤点病と同様にシュードモナス敗血症の一つである。一般に初夏と秋に発生しやすく、治療は抗生物質(テトラサイクリン)が有効である。
ブリやタイのシュードモナス病菌はシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)あるいはシュードモナス・フルオレスセンス(Ps.fluorescens)である。これらの細菌は広く淡水中、魚の腸内あるいは体表に普通にみられる条件性病原菌である。いずれもグラム陰性、好気性の短桿菌(0.3-1.0×10-4.4μm)で、数本の鞭毛(周毛)で運動する。菌体内に黄緑色の蛍光色素(フルオレシン)をもつことが特徴である。発育条件は23-27℃,pH5.5-8.5,塩分1.5-2.5%が最適である。前者はタンパク質を分解しないが、後者は分解する点が違っている。この細菌の病原因子としてタンパク質分解酵素やリン脂質分解酵素が研究された。
一方、シュードモナス感染症としてコイやキンギョの頭部、背部、尾鰭(おひれ)などが厚い粘膜状物で覆われる"白雲症"が知られ、その原因菌は上記の細菌と性質がほとんど同じであるが、莢膜をもち鞭毛がなく運動しない点と、発育温度がやや低い点(約20℃)が違っているので、白雲症菌は非運動性のシュードモナス・フルオレスセンスとされている。
また、アマゴのシュードモナス症菌も類似した細菌であるが、中心部が緑色の独特の集落をつくるシュードモナス・クロロラフィス(Ps.chlororaphis)である。この細菌の病原因子として溶血毒素が研究されている。最近、アメリカではこれらの細菌による感染症をシュードモナス敗血症とよぶようになった。

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