◆魚類の白点病原虫 [Ichthyophthirius multifiliis,I.marinus (Cryptocaryon irritans)]

 淡水魚の白点病は19世紀後半から知られているが、海水魚の白点病は1950年代に報告された。魚類の鰓(えら)や皮膚に寄生した原虫が白点状であることからこの病名になったが、感染する原虫は魚によって違い、標記の前者の原虫はキンギョやニジマスなど淡水魚の白点病の原因となり、後者の原虫はクロダイやヒラメなど海水魚の白点病の原因となる。以前は水族館などの鑑賞魚に発生するだけであったが、最近は養殖魚にも頻発し、しばしば大量に斃死(へいし)することがある。この原虫は真皮に近い表皮に寄生してその組織に炎症をおこし、症状が進むと表皮が剥がれる。また、鰓に多数寄生した場合は呼吸が困難になる。
これらの原虫は繊毛虫類の少膜類(膜口類)に属し、多種類の魚の鰓や皮膚に感染・寄生する。後者の成虫は数日間魚へ寄生してから水中でシストをつくる。シストの中では多数の仔虫がつくられ、成長して水中へでて再び魚へ寄生する。繁殖する適温は25-30℃である。前者の原虫も同じような生活史で魚へ寄生するが、繁殖する適温が14-18℃と低い。但し、両種の仔虫は1-2日以内に宿主へ入らないと死滅する。食用にしない魚の場合の治療はメチレン・ブルー、マラカイト・グリーンまたはホルマリンの薬浴が有効であるが、養殖魚の有効な治療法はない。しかし、原因原虫の生活史を逆にとって、原虫が水中で生活している期間に養殖池の水換え、池換えや清掃を充分に行うこと、海水を希釈し、飼育水温を25℃以上に保つことなどで防除効果を挙げることができる。

関連 原虫
関連 繊毛虫類
関連 シスト