◆魚類のパラコロ病菌 [Edwardsiella tarda]

 パラコロ病は静岡県下で養殖ウナギの病気としてかなり古くから知られ、"ちょうまん"とよばれていた。最初、日本でウナギの鰭(ひれ)赤病の原因菌として、2種の細菌が報告されたが、その後、1種は別項の鰭赤病菌であり、ほかの1種がこの魚病の原因菌であることが判り、当時パラコロバクトラム・アンギュリモルチフェラム(Paracolobactrum anguillimortiferum)とされたことに由来してこの病名となった。近年、ウナギのハウス養殖が盛んになり、高水温下で発生してその被害が絶えない。
その症状は鰭(ひれ)や腹部に発赤がでて、おもに腸、腎臓あるいは肝臓が冒され、とくに肛門やその周辺がひどく発赤して腫れ、強い悪臭をだすことが特徴である。ウナギのほかにはテラピア、ボラ、ヒラメなどにも同じような病気が知られているので、これらをまとめてエドワードジエラ敗血症ともよばれている。
この魚病の予防対策として、ワクチンの浸漬法が有効であるとされているが実用化されていない。また、抗生物質(クロラムフェニコール、テトラサイクリン)による治療は有効であるが、近年これらの薬剤耐性菌の出現が問題になっている。
パラコロ病菌は水辺に棲息する哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類などに常在する腸内細菌の1種で条件性病原菌であるが、まれにヒトや家畜からも分離され、ときにはヒトに日和見感染もするので、人魚共通病原菌であるとも考えられる。この細菌はグラム陰性、通性嫌気性で、細胞の周辺にある鞭毛で運動する短桿菌(0.5-1×1-3μm)である。その発育条件は15-42℃、pH5.5-9.0、塩分0-4%と幅が広い。また、この細菌はタンパク質、脂質、デンプンなどを分解しないが、特定の条件下ではウマの赤血球を溶解(溶血)する。現在、この細菌が産生する溶血毒素、致死毒素や皮膚壊死毒素などが病原性に関係すると考えられている。また、この細菌のシデロフォア(鉄イオンと反応する物質)も研究されている。なお、アメリカで分離されたアメリカナマズのエドワードジラ症菌はエドワードジエラ・イクタルリ(Edwardsiella ictaluri)である。

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