◆甲殻類の殻病菌(キチン分解菌) [Bacillus chitinovorus]

 欧米でエビ・カニ類の甲殻がしばしば冒され、"殻病"、"さび病"あるいは"焼け傷病"などとよばれる病気がある。外国ではアメリカン・ロブスター、タラバガニ、アオガニ、マンジュウガニなどに発生したが、わが国では養殖ガザミでみられることがある。症状は甲殻に変色した斑点が現れ、ついには侵蝕されて大小の孔があく。原因は甲殻に傷を負った場合、キチン分解細菌が感染して細菌の増殖にともなって、じょじょに甲殻が分解されることである。しかし、内部器官まで冒されることはなく、直接死亡する例もほとんどないので産業的には問題にされない。また、海水中にはかなり多種類のキチン分解細菌が常在しているので、この病気が特定の細菌によるとは考えにくい。バチルス属の細菌は陸上や海底にも多数生息し、グラム陽性、通性嫌気性で、鞭毛で運動する桿菌(1.0×3.0-10μm)で、熱にも耐える芽胞をつくる。なお、上記の細菌は現在、国際的な細菌の鑑別・分類書には記載されていない。

関連 グラム陽性菌
関連 通性嫌気性
関連 鞭毛
関連 芽胞
関連 細菌鑑別・分類書