◆光合成色素 [Photosynthetic pigments]

 一般に緑色植物や光合成細菌が光のエネルギーを利用して、二酸化炭素と水またはその他の水素供与体から有機物を合成する過程を光合成という。植物での水素供与体は水であるが、光合成細菌での水素供与体は水素分子(H2)、二硫化イオン(S2-)あるいはチオ硫酸イオン(S2O32-)である。細胞内における光合成の場は、藻類や陸上植物では葉緑体とよばれるが、光合成細菌では膜状構造で、単離された場合はクロマトフォア(chromatophore)とよばれる。これらには脂質とタンパク質のほか種々の光合成色素が存在している。このうち光合成色素は光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを伝達あるいは化学エネルギーに変換する役目を果たしている。エネルギーの変換は植物の場合は葉緑素クロロフィル aによって行われ、この色素は全ての植物に存在する。一方、クロロフィル b,c,d、カロテノイド、フィコビリンなどの補助色素も多くの光合成生物でエネルギーの伝達に関与している。補助色素のうち、カロテノイドのβ-カロテン(β-carotene)がほとんど全ての光合成生物に共通しているほかは、種類によって特殊なものが含まれており、藻類ではその組成が分類のおもな形質の一つになっている。

関連 紅藻・藍藻の色素
関連 独立栄養(性)
関連 光合成細菌
関連 脂質
関連 タンパク質
関連 カロテノイド
関連 フィコビリン
関連 葉緑素