◆呼吸 [Respiration]

 一般には動物が肺、鰓(えら)、皮膚、腸などの呼吸器官で酸素をとりいれ、炭酸ガスを放出する呼吸をいうが、これは外呼吸といわれている。これに対して、生物の細胞内で行われる呼吸は生物が生きてゆくためのエネルギーを得る手段で、生化学的には好気呼吸と嫌気呼吸に分けられている。酸素がある条件(好気条件)下では、酸素を使ってグルコース(ぶどう糖)などの有機化合物を酸化的に分解して、種々の有機化合物と、最終的には水と炭酸ガスまで分解して、そこで得られるエネルギーをATP(アデノシン・トリホスフェート)へ蓄積する過程を好気呼吸という。
一方、酸素がない条件(嫌気条件)下でも酸素以外の無機化合物を分解して、種々の無機化合物を生成し、そこで得られるエネルギーをATPへ蓄積する過程を嫌気呼吸という。好気呼吸は動物や真菌、粘菌、ほとんどの細菌など多くの従属栄養生物が行う生理的な手段である。一方、嫌気呼吸は硫酸塩還元菌、水素細菌、鉄酸化細菌など独立栄養を行う細菌の生理的な手段である。
偏性好気性菌は好気呼吸で生育し、通性嫌気性菌は酸素があれば好気呼吸を行い、酸素がなければ発酵を行って生育する。これに対して、偏性嫌気性菌は二通りの細菌に分けられ、一つは発酵のみで生育する細菌群と、他の一つは嫌気呼吸で生育する上記のような独立栄養性の細菌群である。

関連 真菌
関連 粘菌
関連 細菌
関連 硫酸塩還元細菌
関連 水素細菌
関連 鉄酸化細菌
関連 独立栄養
関連 偏性好気性菌
関連 通性嫌気性菌
関連 発酵
関連 偏性嫌気性菌