◆クリプトスポリジウム[Cryptosporidium parvum]

 クリプトスポリジウムは胞子虫類のコクシジウム類に属する原虫で、多くの動物に感染する。ヒトに感染して激しい下痢と腹痛の原因となるのはパルバム(C. parvum)である。
このC. parvumは、腸管粘膜の上皮細胞の微絨毛内に寄生して、無性生殖と有性生殖を激しく繰り返しながら増殖し、オーシストと呼ばれる直径約5μmの楕円形の時期を持つ。人獣共通伝染病としての特徴があり、保有している動物の糞便と共に排泄された成熟したオーシストが食品や飲料水、手指などを介して経口的に摂取される。
オーシストは手指や器具の消毒に用いる濃度の消毒薬に対しても抵抗性を示すので、院内感染の原因菌としても重要である。オーシストの大きさが約5μmと小さい為、通常の上水道用の浄水処理で凝集・沈降・濾過を行っても完全に除去することは困難で、浄水処理に用いる塩素消毒濃度では全く死滅しない。一旦、C. parvum の汚染が起こると、上水道を介しての大規模な集団感染になる。日本でも、1996年6月に埼玉県内で発生した町営水道の汚染例では、対象地区の住民の約65%に当たる約9千人が下痢を発症し、24人が入院した。
1リットルの水道水に数個程度が含まれていても感染者が発生した事から考えると、この原虫の感染力は強いのでしよう。一般に原虫は培養することが難しいので、培養試験はできません。患者の糞便に顕微鏡で見ると4本のバナナのような構造物(オオシスト)が検出されます。水道水の検査では、1リットルの水道水をフィルターで濾過をして、顕微鏡でオオシストを見付けるか、またはフィルター上に存在する原虫を免疫抗体を用いて検出します。クリプトスポリジュウムと似た原虫にイソスポーラがあり、下痢を起こします。