◆クジラのサルモネラ症菌 [Salmonella enteritidis]

 サルモネラはヒトの食中毒細菌としてきわめて重要であるが、水生哺乳類のサルモネラ感染症の原因菌として知られているのはこのサルモネラ・エンテリティジスのみである。この細菌は瀕死(ひんし)状態のクジラの肉を食べたヒトに食中毒をおこしたことがある。おもにウシやブタなどの肉、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなどの肉や卵からヒトへの感染が多いが、ときにはイヌ、ハエ、ゴキブリ、ネズミ、ミドリガメからもヒトに感染する。とくにサルモネラ汚染の危険があるペット用のミドリガメは輸入が禁止されている。その症状は一般に嘔吐、下痢、腹痛、発熱、頭痛など腸チフスに似ており、ときには死亡することもある。
サルモネラはグラム陰性、通性嫌気性菌で、細胞の周囲に多数の鞭毛をもって運動する桿菌(0.7-1.5×2.0-5.0μm)である。なお、このサルモネラは古くは"ゲルトネル菌"とよばれ、かつてはわが国でのおもなサルモネラ食中毒の原因はこの細菌が占めていたが、1965年以降、ネズミチフス菌(Sal.typhimurium)が多いといわれている。

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