◆軟性下疳菌 [Haemophilus ducreyi]

 性行為感染症(STD)である軟性下疳の病原体である。1889年にデュクレイが軟性下疳の患者の膿から始めて検出した。この菌はヘモフィルス属に分類され(インフルエンザ菌を参照)、グラム陰性の通性嫌気性の細長い桿菌で、液体培地では長い連鎖を作る傾向がある。この菌は栄養要求性が厳しく、培養はかなり困難であるが、ウサギの血液を20〜30%加えた培地で2〜3日炭酸ガス培養すると小さな集落が出現する。外界での抵抗性は非常に弱く、容易に死滅する。ヒトにのみ病原性があり、環境での抵抗力が弱い事から、感染は主に性交などによる直接接触である。
 4〜12日の潜伏期の後、感染局所(主に外部生殖器)に小さな膿疱ができ、その周囲に発赤、水疱形成を伴う。患部では急速に壊死が起こり潰瘍を作ると共にそけい部のリンパ節も侵される。 化学療法剤に抵抗性の株は殆ど報告されていないので治療は可能である。
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