◆らい(ハンセン病) [Leprosy, Hansen’s disease]

 らい菌(Mycobacterium leprae)の感染によって起こる疾患である。らい菌は、結核菌と同じマイコバクテリウムに属するグラム陽性菌であるが、今のところ、人工培地では培養できないので、詳しい性状は不明である。ただ、アルマジロやヌードマウスでの実験から、一回分裂するのに数日かかると推測されている。ヒトのらい患者が感染源となる。
 現在、世界的には、インドやタイなどアジアやアフリカを中心に約1、200万人の患者がいると推定されているが、日本では新しい患者の発生は殆ど見られず、予防に成功している。その為に、従来「らい予防法」で隔離されていたらい患者の社会復帰が認められるようになった。
 らい菌は非常に感染力の弱い細菌で、生後まもなくの親子間の濃厚な接触以外では感染が起こらない。成人してかららい患者の施設に勤務をしている医師や看護婦、ケースワーカーなどでらいに感染・発症した例は報告されていない。らい菌に感染して発症すると、手などの知覚神経が冒され、熱さや寒さをかんじなくなる。
 早期発見できれば、リファンピシンなどの有効な化学療法剤を用いた治療法があるので、日本では以前のように典型的ならいの症状を示す患者はいなくなった。 らいの患者に対する社会の偏見は今でも強く、差別が行われているが、細菌学者からみると滑稽なくらいである。
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