◆霊菌 [Serratia marescens]

 赤い色素を産生する細菌で、死体に付着する細菌と言う意味で霊菌と呼ばれる。抗生物質に耐性菌が多い。日和見感染や院内感の代表的な菌として有名です。病院内で医療器具を介して感染することがあり、尿路感染症や肺炎などの原因となる。抵抗力の弱い患者は注意を要する。
「霊菌」の名前の由来

 ある匿名の方から「用語解説に掲載されている霊菌の名前の由来」について、ご指摘を受けました。
 私どもの「用語解説」にある「霊菌」の説明に、『・・・死体に付着する細菌と言う意味で霊菌と呼ばれる・・・』との記載があります。ところが「霊菌の名前の由来は、宗教と関係があり、聖餐式・・・」というご指摘でした。日本語の教科書を含め印刷物のほとんどに「霊菌の名前の由来は、宗教と関係があり、聖餐式・・・」と記載されています。国際的にはその通りであります。
 この指摘受けてから、私たちの記載がもし間違いであるなら訂正しなくてはなりませんので、長時間を費やして色々と調べました。
「霊菌の名前の由来」については、私どもの教科書にまず『・・・死体に付着する細菌と言う意味で霊菌と呼ばれる・・・』との記載があり、後輩の私達は先輩の書いた「霊菌の名前の由来」をあまり検討せずにそのまま用いていました。
 「霊菌の名前の由来が掲載されている」私どもの一番古い教科書(戦後)の細菌学各論を執筆した先輩に、霊菌の名前の由来について、この説明書きの入手先および出典などについて問い合わせをしました。著作者である先輩は、「北里研究所の部長A先生から若いころに聞いた」と思う、しかし、A先生はすでに他界されていますので、出典などを確認することはできませんという返事でした。先輩の記憶では【国内で霊菌を最初に分離した人(随分と調べましたが日本国内で最初の分離者の氏名などは探し出すことはできませんでした)は、多分動物の死体から赤い集落をつくる細菌を分離し、血液のように赤い色の色素を作り、その菌が動物の死骸に由来することから、日本語で「霊菌」と命名したと聞いたような気がするとのことでした。
 この細菌の正式名称は、「霊菌」ではなく「Serratia marcecence」であります。「霊菌」は、国内で用いられる和名です。私が推測するには、「Serratia marcecence」を日本人の誰かが「霊菌」と和訳したのではなく、たまたま動物の死体から分離した最初の日本人の先生が「霊菌」と命名したのではないかと思います。しかし、今になっては確認できませんので、推測の域をでません。どなたか情報をお持ちでしたら、是非共にご教授いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。