◆レジオネラ菌 [Legionella pneumophila]

 レジオネラ属は水系、土壌など広く自然界に分布するブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌である。 レジオネラ肺炎の原因菌であるLegionella pneumophilaを含め現在までに30菌種以上が報告され、いずれの菌株もヒトに病原性を持つ。
 一応グラム陰性菌であるが、肺炎の患者の喀痰などに含まれる場合にはグラム染色性が悪く、別のヒメネス染色などで染める。この細菌は細胞内寄生性の細菌で生体に侵入した後、マクロファージなどの食細胞に貪食されてもその中で直ちに殺菌される事はなく増殖が可能である。
 この細菌は、普通の培地には発育できないので、B-CYE培地やWYO培地と呼ばれる特別な培地を用いる。これらの培地は中に活性炭が入っているので、黒っぽい培地である。活性炭を加えることでこの細菌の増殖にとって妨げとなる培地中の脂肪酸や活性酸素を吸着する。
 1976年にアメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアのホテルで在郷軍人(legionnaire)の集まりがあった。その時に、空調の冷却水の中で繁殖していたこの細菌が、細かい粒子となって冷房の空気中に浮遊し、それを吸引した高齢者に肺炎様の病気が集団発生し、参加していた高齢者を中心に多数の死者が出た。このことから病気にレジオネラ肺炎、菌名にLegionella(在郷軍人)pneumophila(フィラデルフィアで肺炎様の症状)という名前が付けられた。実際には、この細菌による病気はもっと古くからあり、ヨーロッパなどでは原因不明のポンティアック病の原因であった事が解った。日本では、この細菌による院内感染で1996年に都内のK大学病院に入院していた幼児が2名亡くなった事が報告されたが、日本各地の空調の冷却水からも分離される。 この細菌は他の細菌に比べて高温環境に強く、24時間風呂では高濃度に生存している。この菌はどの種類でもヒトに病気を起こすことが出来るので、24時間風呂を利用している方々は、風呂水を口に入れたり鼻から吸い込まないように気を付けることが大切。