◆レンサ球菌 [Streptococcus]

 本菌はグラム陽性の球菌で、液体培地で培養した細菌を染色して顕微鏡で観察すると曲がりくねったレンサあるいは数珠つなぎになって見える球菌ということで、ギリシャ語のstreptus(曲げ易い、柔軟な)という言葉に球菌(coccus)をいう言葉を組み合わせて命名された。
 この菌の仲間は非常に多く、この菌が原因で起こる感染症も非常に多いが、基本的には化膿性の疾患と、炎症性の疾患が中心になる。レンサ球菌の分類法には色々あるが、広く使われているのは、この菌がヒツジの血液を含む寒天培地の上で増殖するとヒツジの赤血球を3通りのパターンで溶かすので、α溶血性(不完全溶血)レンサ球菌(細菌の集落の周りが緑色に変色するので緑色レンサ球菌とも呼ぶ)、β溶血性(完全溶血)レンサ球菌(細菌の集落の周りが完全に溶血して透明のゾーンが出来ます)、γ溶血性(非溶血;溶血しない)レンサ球菌に分ける方法と、細菌の菌体表面にある抗原物質(C多糖体)の違いで分けるLancefield(ランスフィールド)の血清学的分類がある。
 ヒトの感染症から分離されるレンサ球菌の中で最も重要なのはβ溶血性を示す化膿レンサ球菌(S. pyogenes;A群レンサ球菌、溶血性レンサ球菌とも呼ぶ)で、発赤毒素、溶血毒素などの外毒素を産生する。一次感染症として急性扁桃炎、猩紅熱、皮膚化膿性疾患などを起こし、続発症としてリウマチ熱、急性糸球体腎炎などを起こす。同じくβ溶血性を示すB群レンサ球菌(S. agalactiae)は、元々はウシの乳房炎の原因菌として分離されたが、その後の研究でヒトの膣などにも生息し、致死率の高い新生児敗血症の原因になっていることが分かった。α溶血性を示す肺炎レンサ球菌(S. pneumoniae;C多糖体を持たないので血清分類はされていない)は莢膜を持ち、ヒトでの重篤な大葉性肺炎や中耳炎を起こす。特に最近、ペニシリン抵抗性の肺炎レンサ球菌が増加しているので、治療上の問題となっている。
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