◆新型コレラ菌[Vibrio cholerae O139]

 コレラは、コレラ菌の産生する外毒素により引き起こされる激しい下痢と嘔吐により、極度の脱水症状をきたし、時には死亡する恐ろしい病気である。ヒトにコレラという病気を起こすのは、コッホがエジプトとインドで分離した、抗O(O;菌体抗原)1抗体で凝集するコレラ菌(O1コレラ菌)のみで、それ以外の菌はO1非凝集(O1-non-agglutinable)ということでNAG(ナグ)-Vibrioといわれ、コレラを起こす事はないと思われてきた。しかし、1995年にインドのベンガル地方で、それまでのコレラと同じ様な症状を起こすO1抗原を持たない新型のコレラ菌が分離され、O139という新しい抗原を持つことが判り、V. cholerae O139 ベンガル株と命名された。 この新型コレラ菌であるO139ベンガル株は従来のO1コレラ菌と同じコレラ毒素産生遺伝子を持ち、毒素を産生して、コレラと同様の症状を示すことが研究の結果明らかになった。