◆腫瘍 [Tumor]

 ヒトや動物に発生し、遺伝子レベルで変異した自律性がある異常な新生細胞とその組織を腫瘍という。一般に腫瘍の発生初期は顕微鏡レベルの微小な細胞塊であるが、進行すると肉眼的にも判る組織塊となる。しかし、白血病のように血中で増殖して細胞塊をつくらない場合もある。 腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられ、一般には悪性腫瘍を癌(がん:cancer)とよばれているが、医学的には悪性腫瘍はさらに上皮性悪性腫瘍と非上皮性悪性腫瘍に分けられ、前者を癌腫といい後者を肉腫という。 良性腫瘍は一定の大きさになると増殖が止まり、ほとんどの場合、浸潤性の増殖や転移はみられないので、完全に切除すれば再発しない。一方、悪性腫瘍は放置すると宿主が生きている限り増殖して大きくなり、他の組織へも転移するので死亡率も高い。しかし、早い時期に発見して適切な治療を施せば、永久に治癒する率が高まる。悪性腫瘍の原因は基本的には細胞の増殖を調節するメカニズムに異常をきたすことである。多種の癌遺伝子(oncogene)が発見され、細胞の増殖や癌化に関係すると考えられているが、真の癌化のメカニズムはまだ充分に判っていない。