◆食品衛生
  [Food hygiene(日,英),Food sanitation,Food control (米)]

 全ての飲食物の摂取によっておこる栄養障害以外の健康障害を防止するための種々の衛生対策を食品衛生という。世界保健機構(World Health Organization: WHO)では食品衛生を「食物の生育、生産、製造の全過程で、最終的に人に摂取されるまでに食品の安全性、健全性、悪化防止を達成するための手段」とされている。要するに純正食品を確保するために、不純有害物による障害を防止する手段で、環境衛生、医療衛生とともに公衆衛生の中の重要な分野である。食品衛生では食物あるいは食品として生産されてから消費者の口へ入るまでの全ての経路、具体的には
   (1)食糧の生産段階(栽培、収穫、養殖、漁獲)
   (2)食品の製造・加工工程(設備、材料、機械、容器、包装)
   (3)食品の流通過程(貯蔵、運搬)
   (4)販売段階(包装、保存、販売)
   (5)消費段階(調理、保存)
などの各過程が対象になり、その過程で食品への汚染、変質、腐敗などを防ぐ衛生対策がなされる。そのほかにこれらの過程での整備、指導、監視などが行われる。
食品衛生の対象となる生物や物質は    (1)有害微生物(病原微生物、腐敗・変質微生物など)
   (2)生物がもっている有毒成分(動植物毒、細菌・真菌毒素、発癌性物質など)
   (3)化学物質(食品添加物、有害物質など)
   (4)寄生虫
   (5)その他(放射能、異物、死骸など)である。
食品衛生の検査法については昭和22年(1947年)に制定され、その後改定された法律「食品衛生法」に基づいて、厚生省で設けられた専門委員会によって作成、改定された「食品衛生検査指針」があり、この指針とは別に試験法として日本薬学会協定の「衛生試験法」がある。また、上記の法律に基づいて、食品の製造業務上では「食品衛生管理者」をおくことが義務づけられており、公的には都道府県や政令都市で任命された「食品衛生監視員」が食品の監視業務に当たっている。現在では食品の製造・加工や流通の多様化にともなって、衛生上の問題もきわめて多岐にわたっているので、公害や食中毒など環境衛生や医療衛生と密接に関係している。最近、各種食品の製造過程での衛生管理を徹底させるために、危害分析重要管理点(ハセップ)とよばれる世界的レベルでの品質管理方法が各国で指導・実施されようになった。

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