◆細胞壁 [Cell wall]

 高等植物、藻類、真菌、細菌、藍藻(藍菌)などの細胞の細胞質膜の外側にある分厚く強固な層で、おもに多糖質から成り、細胞の形を維持して外部の環境から細胞を保護する役目がある。細胞壁自体には代謝活性がなく構造多糖として存在している。動物細胞と微小細菌であるマイコプラスマには細胞壁がない。高等植物や藻類では繊維性の固形化した層状構造で、植物ではセルロース、藻類ではペクチン、ヘミセルロースその他の多糖の基質にセルロース、キシラン、マンナンなどから成る繊維が埋まって配列している。藻類では一般に無色透明で滑らかであるが、主要な細胞壁多糖の種類が分類上重要である。真菌の細胞壁も藻類のそれに類似しているが、上記の多糖のほかにグルカンを含むものがある。また、休眠胞子や厚膜胞子の細胞壁は特有の成分を含んでおり、乾燥、高・低温などの過酷な外部条件に耐える構造をしている。
細菌の細胞壁はグラム陽性菌とグラム陰性菌とで構成成分が違うが、共通の成分は細菌特有のペプチドグリカンとよばれる多糖質とペプチドが結合した複合的な構造である。多糖部分はN-アセチルグルコサミンとそれに乳酸が結合したN-アセチルムラミン酸である。ペプチド部分はアラニン、グルタミン酸、リジン(またはジアミノピメリン酸)の鎖がグリシンで架橋された構造である。
グラム陽性菌はこのペプチドグリカン層が分厚く、タイコ酸(テイコ酸)とよばれる層が付随している。グラム陰性菌ではさらに複雑で、外部からリポ多糖、リポタンパク質、タンパク質の各層が被っている。グラム染色はこの細胞壁の構造の違いが原因していると考えられている

関連 真菌
関連 細菌
関連 藍藻
関連 藍菌
関連 細胞質膜
関連 多糖質
関連 マイコプラスマ
関連 多糖
関連 休眠胞子
関連 厚膜胞子
関連 グラム陽性菌
関連 グラム陰性菌
関連 ペプチドグリカン
関連 N-アセチルムラミン酸
関連 タイコ酸
関連 リポ多糖
関連 リポタンパク質
関連 タンパク質
関連 グラム染色