◆腸炎エルシニア [Yersinia enterocolitica]

 腸内細菌科で、ペスト菌などと共にエルシニア属に含まれるグラム陰性、通性嫌気性の桿菌である。腸菌内細科に属するが、増殖は低温域(27〜30℃)の方がよく、鞭毛は37℃の培養では形成されないが、25℃で培養すると形成され、運動性も回復する。この菌は、通常はブタやイヌの腸管内に分布する人獣共通伝染病の原因菌で、汚染ブタ肉などを介してヒトに感染すると考えられる。食中毒原因菌に指定されているが、実際に感染が起こると急性胃腸炎(食中毒)の他に、終末回腸炎、虫垂炎、結節性紅斑、関節炎や敗血症などを起こす。乳幼児では急性胃腸炎が多く、年長児や成人では終末回腸炎や虫垂炎が多いといわれる。この菌は0〜5℃でも増殖可能なので、汚染されたブタ肉などを冷蔵庫で保存していても菌は増殖する。
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