◆腸炎ビブリオ毒素 [Vibrio parahaemolyticus toxin]

 わが国では代表的な食中毒細菌である腸炎ビブリオは熱に強いタンパク質性の溶血毒素(耐熱性直接溶血毒素)を産生する。この溶血毒素は心臓毒性、細胞毒性、腸管毒性があり、動物に対する強い致死活性をもっている。腸炎ビブリオの病原性の強弱がこの毒素の産生と関連していること、つまり病原性が強い菌株は溶血性も強いということが神奈川衛生研究所でみいだされ、"神奈川現象"とよばれている。また、神奈川現象陰性で腸炎をおこす菌株でも、耐熱性の溶血毒素に類似した毒素が産生されるので、この毒素が腸炎ビブリオの病原性に重要な役割をもつという考え方がある一方、どちらの毒素も産生しない菌株も患者から分離されているので、この毒素のみでは説明できないとする考え方もある。
なお、非O1コレラ菌(V.cholerae non-O1)やそのほかの腸管感染症の原因菌であるビブリオ(V.hollisae,V.mimicus)も耐熱性直接溶血毒素に類似した毒素を産生し、この毒素が下痢の原因菌に広く存在していることが判ってきた。

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