◆ワクチン [Vaccine]

 生体に接種して微生物による病気を起こさせなくする物質・製剤をいう。殺した病原微生物(死ワクチン)、病気を起こす力を弱めた微生物(弱毒または生ワクチン)、毒性を弱めた毒素等がワクチンとして用いられる。結核のBCGや天然痘の種痘は、生ワクチンの代表である。種痘は200年前にイギリス人のジェンナーによって作られた。ワクチンによる抵抗性は、ワクチンとして用いた物質にのみ特有に作用します。ハシカに掛かったヒトは、二度とハシカにならないのはこのような仕組み(免疫)が成立しているからです。

 ワクシンともいわれ、病原微生物の発病力を人工的に弱めて、抗原としてヒトや動物へ接種することによって、体内にその抗体を作らせて病気に対する抵抗性を高める(予防接種)ために用いられる薬剤をいう。この発想と実施は古く1796年、E.ジェンナー(イギリス)による、いわゆる種痘(牛痘ウイルスを用いた天然痘の予防法)の開発に始まる。その後、ワクチンといわれるようになったが、この用語はL.パスツール(フランス)によって、ラテン語の雌牛vaccaに由来して名づけられた。現在は上記のような生物薬剤をワクチンといい、ワクシネーション(vaccination)という語も、種痘に限らず種々の予防接種を意味するようになった。
ワクチンには種痘(牛痘ウイルス)やBCG(ウシ結核菌)のように生きた病原体を用いる生ワクチンと、無毒化した病原体を用いる不活化ワクチンがある。さらに不活化ワクチンには全微生物体を使用する死菌ワクチンと、病原体の構成体の一部または毒素を不活化したものを使用するコンポーネント・ワクチンがある。後者には破傷風菌やジフテリア菌の菌体外毒素を無毒化したトキソイドがある。不活化にはホリマリンや加熱処理が行われる。一般に生ワクチンは免疫原性が高く長時間の持続性があるが、副作用がともなうことが問題である。一方、不活化ワクチンは開発しやすいが、効力が生ワクチンより劣る。近年、免疫学、タンパク質工学、遺伝子工学などの発展に伴って、より優れたワクチンが開発されつつある。

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