◆薬剤耐性菌 [Drug resistant bacterium(ia)]

 多くの細菌は抗生物質やサルファ剤などの化学療法剤によって発育・増殖が抑制(阻止)されるが、しばしば、本来有効とされる薬剤による阻止効果がみられなくなることがある。これらの細菌をその薬剤の耐性菌という。1種の薬剤に対する耐性菌を単剤耐性菌といい、多種の構造が類似しない薬剤に対する耐性菌を多剤耐性菌という。また、ある薬剤の耐性菌が同種の薬剤にも耐性をもつ場合は交差耐性(cross resistance)という。
薬剤耐性は細菌自体がもっている仕組みで、化学療法剤の過剰投与によっておこる場合が多いが、細菌の細胞質内にある薬剤耐性因子(DNA)であるプラスミド(R plasmid)が他の同種の細菌へ組み込まれて耐性菌になる場合もある。また、染色体性の自然耐性菌や染色体遺伝子の突然変異による耐性菌もある。
 そのメカニズムはR プラスミドによって薬剤を不活化する酵素がつくられて薬剤耐性になる場合が多いが、薬剤の能動輸送が阻害され、薬剤分子中の活性基が変換される場合もある。
近年、抗生物質をはじめ各種の化学療法剤が医療分野や農林水産分野で、多量に使用されて、種々の薬剤耐性菌が出現して問題になっている。また、最近メチシリン耐性ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin resistant Enterococcus: VREC)が出現して病院などで問題視されてきた。

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