はじめに


 微生物学の発展史は、数え切れないほど多くの尊い人命の犠牲のうえに構築された研究者が命をかけて闘った歴史でもある。微生物の研究で犠牲になった国内で最も有名な研究者は、子供でも知っている、新千円札にも登場する野口英世博士であろう。野口博士は、アフリカに黄熱の原因調査にでかけ研究途中で不本意にも黄熱ウイルスの犠牲となってしまった。生命の終りが近づき死を覚悟した間際に野口英世博士は、医者として研究者としてなにを思い、家族や周囲の人々になにを言い残したかったのであろうか。遺書が残っているとは聞かないので、これは永遠に判らないことかもしれない。

ところが珍しいことに、自分の死を覚悟した際最愛なる妻に遺書を認めた石神亨という人がいた。現存している遺書を紹介すると同時に石神亨の人物像に迫りたい。これはまさに人生のドラマである。


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  微生物管理機構 理事長
       北里大学名誉教授 
       医学博士 田口 文章

掲載誌:石神 亨の生涯 北里柴三郎所長の助手第1号(上・下)
     日本医事新報 No.4118,41-43(2003);平成15年3月29日発行.
     日本医事新報 No.4119,43-46(2003);平成15年4月5日発行.