第119話
 整数になるかならないか
 

 
「主な目的」
和の求まらない級数に対して、何をどうすればよいか、どうやって見当を付ければよいかを考え、和が整数になるかどうかの判定を行います。
 
 
本 文 目 次
 
著者 坂田 明治
 

 
 
第119話 整数になるかならないか
 
1.どうでもいい話
 今年もクソ暑い。暑過ぎる。それにこの季節、また、ビンボ退治をやらなければならない。去年も一昨年も、色々やってみたのに、ちっとも減った気がしないな。一体、どうやったら、全滅できるんだ。
 
 まあ、それはともかく、ピッピはロシアへ行ってしまった。ロシアへ行くちょっと前に撮った写真が以下だ。首を伸ばして、ピッピは何を考えているのだろうか。
 
 
 野鳥は、ポーズなんてとってくれないし、それどころか、近づくと逃げてしまう。カメラじじー(カメラ小僧のなれの果て)みたいにでーーーっかいレンズ付きのカメラを持ってる訳でもなし。偶然、野鳥が近くにきて、更に、カメラの電源が入っていて(しょっちゅう電源ONになる前に逃げられた)、その上、ピントが合っている場合にのみ写真が撮れる(いつもピントを合わせている間に逃げられた)。
 
 大体、20年位前のデジカメと安物のデジタル双眼鏡しか持ってないもんな。一眼レフのカメラとでっかいレンズが欲しいけど、金もないし、ものぐさな俺には、レンズの手入れなんてできっこないしな。
 
 それでも、偶然、色々と面白い写真が撮れたりもする。こんなドブガモ正面写真なんてあまり見たことがないだろう。こいつら、普段は横顔だもんな(目が横に付いているので、写真を撮ってる奴のことを見ていると思われる)。
 
 
 これも偶然、サシバと思われる奴が電柱に止まっているときに撮れた写真だ。どっかの町のマスコットキャラにサシバのサッちゃんなんてのがいたなー。それにしても、トビは異様に嫌われていて、トンビのトンちゃんのように呼ばれ、可愛がられているという話は聞かないなー。感じとして、トビはどこにでもいるし、人間を襲って食べ物を奪っているからだろうか。ちなみに、このノリからして、写真2のドブガモは、ドブガモのドブちゃんでいいかな。
 
 
 今度は、恐怖の顔なし妖怪のっぺら鳥だ。そもそも、ちび鳥は、ドブガモみたいな中型鳥より、撮影がはるかに難しい。ちょこまか動き回って、すぐ逃げるし、小さいから、より近づかないとピントが合わないし(小さいので、自動焦点機能がちゃんと認識しない)、やっぱり偶然近くに来たときじゃないと撮れない。丁度、カワラヒワと思われるちび鳥が正面にいたが、シャッターを押した瞬間に後ろを向きやがった。こいつ、性格がワリー。
 
 
 偶然とはいえ、こんな写真も撮れた。すけべおっさんキジが、若いねーちゃんキジナンパしてる写真だ。キジのオスが、体を膨らませてナンパをしている。この写真を見て、すぐにメスを見つけられるかな。今まで、見せた奴らは、どこにメスがいるのかわからず、探しまくっていた。キジの目撃例は、オスに比べてメスが極端に少ない。大体は、道を横切るときとか、緑の草むらにいるときとか、そんなものばかりだ。しかし、この写真を見れば、目撃例が少ないのは納得できるだろう。いても見えないからと思われる。
 
 
 こんな写真もある。キジの夫婦(こいつら本当に夫婦か)とドブガモが仲良く一緒にいる。キジのオスとドブガモって仲がいいのか、ということは別として、どこにキジのメスがいるかわかるかな。
 
 
 以下の写真は、見ての通り、ドブガモとキジのオスが一緒に田んぼに入って何かをつっついている。それにしても、キジも田んぼに入るのか。の上や、田んぼのあぜ道を歩いているのはよく見かけるけど、田んぼに入るの初めて見た。
 
 
 この後、キジのメスが体の向きを変えて顔を上げたので、キジのメスが認識できるだろう。写真の左の方にある薄緑色の棒を見て位置合わせをすると、どこにいたのかが明らかになる。
 
 
 いやー、こういう写真を見てくると、キジのメスは忍者としか思えないな。これからは、キジのメスのことをくノ一鳥と呼んだ方がいいかな。
 
 
2. 対象となる級数
 今回は、式(1)の級数の和整数となるかどうかを考えましょう。
 
 
 まず、意味をはっきりさせよう。どういうことかと言うと、式(1)の級数の和が整数になるような n があるかどうかです。もし、式(1)の級数の和を整数とするような n があれば、それを見つける必要があり、どんな n をとっても整数とならないのであれば、それを示さなくてはなりません。
 
 さて、初項の 1 は整数なので、級数の和が整数かどうかには影響しません。それなら、ちょっとでも簡単にできるものは簡単にするということで、初項を無視して、式(2)について考えましょう。
 
 
 ところで、式(1)は見かけの簡単さに対する性格の悪さで有名な級数です。和が求まらない、つまり、簡単な式で書けない上に、極限では無限大に発散しています。少し簡単にした、式(2)となったところで、同じです。こんな連中を相手にするのは結構大変な気がするなー。
 
 
3.整数となる場合はあるか
 さて、式(2)の級数の和が整数になるかどうかを考えるに当たっては、和が簡単な式として求まらないことから、扱いが面倒そうですね。
 
 とりあえず、式(2)をよく眺めてみると、分数(有理数)の有限和です。したがって、この和は有理数になります。有理数は分数の形で書けるから、式(3)のような形になるでしょう。
 
 
 この分数が整数となるときは、分子が分母の倍数のときだから、 t は s の倍数となります。そうすると、式(3)の左辺、つまり式(2)を通分したときに、分子が分母の倍数になっているかどうかを調べればよいことになります。
 
 まず、分母は 2 から n までの整数の最小公倍数です。例えば、式(4)のようになるので、単純に n ! などと早合点しないように。
 
 
 次に、分子ですが、元々、和が求まらないことから、簡単な形にはなりそうもありません。何も思いつかないので、いつものように行き詰ってしまいました。どうしようか。もう、さっさと止めて、今回の話は無かったことにしよう。
 
 
 
 
 
 
 と思ったけど、止めるの止めた。
 
 では、どうしようか。見当が付かないので、様子を見ましょう。最初の方、例えば、 n が、 2 から 7 までを計算してみます。なお、計算結果は当てにならないから、必ず自分で計算して試すこと。
 
 
式(5)をよく見ると、通分したとき、 n が、 2 と 3 のときは 1/2 の通分で分子が奇数、その他の分子は偶数、 n が 4 から 7 のときは、 1/4 の通分で分子が奇数、その他の分子は偶数となっています。当然、もっと先まで計算して確かめるのは読者の宿題です。
 
 これらの合計では、いずれも分子が奇数で、分母は偶数です。したがって、整数とはなりませんね。
 
 このことから、式(6)が予想されます。
 
 
 もし、式(6)が正しければ、式(2)の級数の和は、どんな n に対しても整数にはならないでしょう。以下、この予想が正しいかどうかを考えてみます。
 
 ここまでのことで、基本になっているものは、通分ですね。そこで、通分について思い直します。
 
 式(2)で通分するということは、分母分子に同じ数をかけ、分母を 2 から n までの整数の最小公倍数にすることです。そして、その最小公倍数は、式(6)の仮定の部分において、式(7)のように書けます。
 
 
 偶数の素数は 2 だけなので、それ以外の素因数は全て奇数になっています。更に、偶数のべき乗は偶数で、奇数のべき乗は奇数です。このことから、通分したときの分子の挙動がわかります。なお、分母が 2 の m べき乗の項が式(8)で、その他は式(9)です。
 
 
 
 式(8)、式(9)から、式(2)を通分したときの分子は奇数となります。分母は、明らかに偶数なので、式(2)の級数の和は、決して整数となることはありません。
 
 
4.一般化して考えよう
 まずは、式(2)を一般化しましょう。一般化したものが式(10)です。
 
 
 当然、 a 2 は 2 と互いに素なので、奇数です。
 
 なお、 a と b の最大公約数を、式(11)のように記載します。
 
 
 特に、式(12)のように最大公約数が 1 のときは、互いに素となります。
 
 
 式(10)を通分して、式(8)、式(9)と同様に、
 
 
 
から、式(13)の分子は奇数、式(14)の分子は偶数です。
 
 なので、式(10)の級数の和は整数とはなりません。
 
 他にも、式(15)の級数の和は整数とはならず、やり方は今までの方法とほぼ同じです。自分でやってみましょう。
 
 
 ちなみに、他人に、この問題を出すときは、「式(1)の級数の和が整数とはならないことを証明せよ。」とした方がとっつきにくくなります。本稿でやったように、「整数となることがあるか。」としてしまうと、最初の方から計算をして、当たりをつけようとする輩がいるみたいです。
 
 
 
2024年7月16日
著作者 坂田 明治(あきはる)
 

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