第24話
 スネルの法則と、最速降下線と、計算地獄と
  〜 鏡の国の光子さん番外編 〜
 

 
 
「主な対象読者」
主な対象者は、高校高学年以上ですが、
むしろ、中学、高校の先生向けです。

 
 
 
本 文 目 次
1. スネルの法則
2. 計算地獄
3. 最速降下線(さいそくこうかせん)
4. サイクロイド
5. アリ地獄
 
著作 坂田 明治
 

 
 
第24話 スネルの法則と、最速降下線と、計算地獄と
      〜 鏡の国の光子さん番外編 〜
 
1. スネルの法則
 
 いつまでも、「数式が入らないから」と逃げてばかりもいられないので、今回は、数式導入の実験的な試みをします。そこそこの計算力で済みますが、微分を用いますので、不本意ながら、対象者を高校高学年以上としました。もちろん、高校の高学年以上でなければ読んではダメというのではありません。計算の仕方(概ね微分のところ)が解らなくても(計算を無視して)、流れを読み取れば十分です。(ハッキリ言って、第2章は地獄です。計算自体は大したことないけど、やたら長くて辛い。入力するのも地獄だった)
 
 扱う題材は、「スネルの法則」と「最速降下線(さいそくこうかせん)」です。スネルの法則は、「鏡の国の光子さん その一」の最後の方にちょっとだけ出てきています。最速降下線は古典力学をやれば大抵出てきます。これらはいずれも、変分法(へんぶんほう)で解く問題ですが、ここでは変分法なしでやります。(こんなこと書いてるけど、真の目的は2章の計算地獄だもんね)
 
 まずは、スネルの法則から。スネル(1591〜1626)は経験的に、空気中での光の速さをv、水中での光の速さをwとすると、図1にあるような経路になることを発見しました。「この当時光の速さなんか計れたんか」という質問はしないよーに。記述を簡単にするため、多少いい加減なことを書いてますので。
 
 空気と水にこだわる必要はなく、均質な媒質(きんしつなばいしつ。媒質というのは光が通るところ。均質というのは、歪みがなくどこでも同じということ)から別の均質な媒質へ光が進むときでも、その経路には図1に書いてある式が成り立ちます。これをスネルの法則と呼びます。その後、フェルマーによって、この法則は一般化され、最終的に「幾何光学におけるフェルマーの原理」に達しました。これは、「A点からB点へ行く光の通り道(光路)は、この2点を結ぶ経路のうち時間が最小になるものだ」というものです。均質な媒質なら、直線距離が最小になりますので、「鏡の国の光子さん」でやったようになります。
 
 ちなみに、光は真空中のときが一番速く、空気、水、ガラス、プラスチックなどの媒質では遅くなります。
 
 メガネやコンタクトレンズをしている人も多いかと思いますが、レンズ系の計算はフェルマーの原理が基礎になっています。
 
 さて、スネルの法則も光についてだけなら簡単に出せます。光を平面波(へいめんは)と捉えれば、初等幾何によって出せますが(本当はこっちのやり方でやりたいんだけど)、ここでは、粒子も含めて考えていますので、時間が最小になるということから直接出さなければなりません。(数式を入れるのがしんどいよー)
 
 以下、スネルの法則を導き出しますが、高校生を対象として、可能な限り精密な方法によって行います。(でも、相変わらず距離と長さを混同して使っている)
 
 まずは、式で表せるように変数を導入します。とりあえず、図2にあるように、色々な長さと点を導入します。点A、点B、媒質の境界線は固定ですから、a、b、cの長さは一定です。点Oが媒質の境界線を動きますので、ここに変数を導入します。POの長さをxとすると、OQの長さがc−xとなります。
 
そこで、AからBに行くのに要する時間をxの関数として、f(x)とします。あとは、実際にf(x)を式で書いて、その最小値について考えて行くわけです。その前に、xの範囲を限定しましょう。無制限に扱っても、複雑なだけですので、なるべく余計なところは考えたくありません。
 
 図3をよく見てみましょう、PQの外側にある赤い線青い線は最小にはなりません。三角形の性質で、「大きな角に相対する辺は、小さな角に相対する辺より長い」というのがあります。これを使えば、「直角」や「鈍角」は一番大きな角になっていますので、それに相対する辺が最大になります。
 
 すると赤い線は上の媒質で、APより時間がかかり、しかも、下の媒質でもPBより時間がかかることになります。当然最小時間にはなりません。青い線も同様です。
 
 以上から、PQの間でだけ考えればいいことが解ります。POの長さをxとすれば、OはPから出発して、Qまで動きますから、0 ≦ x ≦ cとなります。もちろん、OQの長さはc−xです。
 
 それでは、まず、式を立てて、その上で考えて行きます。図2を見ながら式を追います。
 
 一応、スネルの法則は出ましたが、試験でこんな回答を書くと、減点か×です(この問題は試験に出ないけどね)。何がまずいのでしょうか。問題は、「本当に最小にするxが存在する」ことを示していないことと、「本当に最小になっている」ことを示していないことです。もっとも、変分法でも、こんな風にやって、「できた」としている人をよく見かけますが。
 
 問題を整理してみます。第一に、「(5)を満たすx(0 ≦ x ≦ c)が存在する」ことを示さなくてはなりません。第二に、「(5)を満たすxの時に、f(x) が最小になる」ことを示す必要があります。更に、「(5)を満たすx(0 ≦ x ≦ c)はただ一つしかない」ことが示せればなお結構です。こうなってくれば、(9)は意味を持ってきますし、αとβがただ一つに決まります((6)と(7)から)。万万歳ですね。
 
 
2. 計算地獄
 
 さて、教科書など見ると、最小である事を示すのに増減表が書かれています。しかし、何のために増減表を書いているのか解ってない人が結構いたように思います。このような人達は、なんだか知らないけど、とにかく書かないと、減点か×になるので書いていたんですね。
 
 増減表は、本当に一番小さいことや一番大きいことなどを調べるために書くものです。図4を見れば解りますが、本当に一番小さいことを調べるのに使っていました。簡易グラフみたいなものです。図4では、増減表から、グラフ化して、最終的にy軸上に値を並べると、確かに一番小さいことが明らかになります。この場合では、g(r) ≦ g(x) ≦ g(q) (p ≦ x ≦ q)になっています。
 
 しかしながら、ここでは増減表が役立ちません。(4)は複雑すぎて、増減表なんて書く気もしないでしょう。そこで別の方法を考える必要があります。
 
 まず、(4)で、x = 0、x = cと置いてみます。
 
 
(4)からf’(x)は0 ≦ x ≦ cで連続なので、図5のような感じのグラフになります。X軸を横切っているので、そこでf’(x) = 0でいいのかな。
 
 ガウスなど何人もの偉大な数学者が、y = h(x) がp ≦ x ≦ q(ただし、p、qは有限)で連続のとき、h(p) < 0、h(q) > 0であれば、h(x) = 0となるx(p < x < q)が存在するということを当然のこととして使っていました。図6を見れば、x軸を横切っていますので、確かに成り立っていそうです。まあ、下側の図を見れば解りますが、一個だけとは限りません。とにかく、「ある」ということです。
 
 本当にそれでいいのかな。度々、「どんなものでも天下り的に受け入れないで、一応は疑ってかかろう」と書いてました。(うっかり信じると、どっかの国の年金問題や企業の不正のような目に遭(あ)いますので。なぜか、こういういい加減なことをする人達は「優秀だ」ということになっているんですね。役人や有名人など「偉い人は偉い」と思い込ませる洗脳教育しているのか?)
 
 この場合、「グラフを見て当たり前に成り立つ」というのは、第一に、関数のグラフが書けるということ、第二に連続関数のグラフは連続曲線だということが前提ですね(連続曲線なんだから、x軸と交わるということです。不連続なら、切れていますので交わらないこともあります)。少し、遠回りになりますが、「悪魔の階段」というものを考えてみましょう。(常識的な意味のグラフから少し離れますが、フラクタルの紹介にもなりますし)
 
 悪魔の階段というのは、作り方がちょっと凝(こ)っています。まず、図7の左上のグラフ(ただの赤い線です)を種として用意します。それから、右上図の四角の中にあるグラフを用意します。そして、作り方は、最初に、左上のグラフの赤い線を右上図の四角の中にあるグラフで置き換えます。次に、この置き換えた、左下のグラフで、2本の赤い線を右上図の四角の中にあるグラフを縮小したもので置き換えます。縮小は、ヨコを1/3タテを1/2にします。
 
 すると、右下のグラフができます。更に、右下のグラフで、4本の赤い線を右上図の四角の中にあるグラフを縮小したもので置き換えます。縮小は、ヨコを1/9タテを1/4にします。以下同様に繰り返します。これを無限に繰り返したなれの果てが「悪魔の階段」です。
 
 気づいたかとも思いますが、青い線は一度書いてしまうとその後は変化しません。変化して行くのは赤い線だけです。
 
 このようにして出来た「悪魔の階段」は絵に書けない曲線です(赤い線のなれの果てが書けない)。しかも、常識的な意味での関数にもなっていません。色々と面白い性質持っていますが、ここではやりません。自分で考えてみるとよいでしょう。(カントル集合について勉強してからの方がいいかも)
 
 この階段は、高さが1/2の段とか、そういうところを指定すれば踏めますが、どうしても最初の一歩が踏み出せません。ともかくも、このように絵に書けない曲線があると解りました。
 
 ちなみに、「悪魔」が出てくるから、タイトルが「計算地獄」なのでした。でも、これ、誰も最初の一歩を踏み出せないから(誰も天国へ行けない)、「天国への階段」とした方がいいような気もします。そうであれば、タイトルは「計算天国」でした。(なんか、「計算地獄」でも「計算天国」でも同じような印象を受けます)
 
 更に、もっと滅茶苦茶な全く何も書けないような連続関数もあります。こうなると、図6のように、グラフを元に考えて、h(x) = 0となるx(p < x < q)があるというのは微妙な問題になってきました。
 
 ここで、ボルツァノの登場です。厳密な解析学を展開した人物の一人です。実際、実数の性質をしっかりと把握すれば、ここで問題としているようなもの(図6とその説明)もキチンと導き出せることを示しました。どのようにして解決していったかを説明します。
 
 基本的な方針は、区間[ p , q ]の中点を取り、その関数値の正負を調べます。そして、その符号に応じて、左端が負、右端が正となる区間を選びます。図8をよく見て見ましょう。詳しく書くと以下のようになります。なんとなく、h(x) = 0となる犯人を段々追い詰めているように見えますね。
 
 今度は確かに無理数の計算ができました。引き算、かけ算、割り算も、少し注意すれば同様にできます。自分で考えてみましょう。(ヒント:引き算は、まず、各項に−1をかけたものを作れば(不等号の向きが反転することに注意)、あとは足し算になります。かけ算の場合は数列に正負が混じらないように調整して、符号に気をつけましょう(不等号の向きが反転するから)。割り算は、かけ算のときの注意と、逆数をとってかけ算になおせばできます。逆数をとるときに不等号の向きに注意しましょう)
 
 少し余談になりますが、最近、生徒に「解析概論」(木貞治著、岩波書店)を薦(すす)めている先生の話を全く聞きません。このような先生方は居なくなってしまったのでしょうか。また以前は、田舎街の本屋にも解析概論が置いてありましたが、全く見かけなくなりました。どれを見ても同じような、面白くもないコンピューター関係の本が幅をきかせています(大体、ソフトの使い方なんて、キチンとした取り説付ければ済む話じゃないか。手抜きだな)。いったいどうなってしまったのでしょうか。恐らく、行動様式の変化とかなにかで、本屋も経営が苦しくなり、売れない専門書や返品のきかない本を置くのを止め、売れる本だけに絞ったからでしょう。しかし、これも問題です。実際、本屋へマンガを買いに行って、そこで解析概論を見つけ、「おっ、これがあの狸おやじ(先生のこと)の言ってた本か。どれどれ、ふん、ふん、なるほど(←解ったようなフリしてるが、本当は全然解ってない)」となって勢いで買ってしまったという例もあります。先生、本屋、大人の行動、これらが総合的に作用して子供を育てているんですね。今では、「専門書はネットで買えばいいじゃないか」という人もいますが、ネットに全文が出ているわけでもないので、手にとって全体を眺めてから買うかどうかという選択肢はないでしょう。なお、解析概論を読まれても、本稿の参考にはなりませんので念のため。
 
 ここで、図8とその後の説明に戻ります。図8から、(12)、(13)の数列を作ると、これらの数列は、実数完備性により収束します。その極限をγとしましょう。以前に書いた通りです。後は、h(γ) = 0となることが示されればいいわけです。
 
 
 まだ、関数 h が連続であるという性質を使っていません。ここでいよいよ使います。まず、h(γ) ≠ 0と仮定すれば、h(γ) < 0 、h(γ) > 0のどちらかです。どちらでも同じなので、h(γ) > 0とします。
 
 今後のこともあるので、少し複雑な方法をとりましょう。まず、小さな正の数εをとります。h(γ) より小さい正の数ならなんでもいいですが、はっきりさせるために、以下の様にします。
 
 
 h( x )は連続関数ですから、γに近いxに対して、h( x )はh(γ)に近い値になります。x の代わりに数列に置き換えても同じです。
 
 
 
 以上から、関数 h が連続で、h(p) < 0 、h(q) > 0であれば、h(x) = 0となるx( p < x < q )が存在することが解りました。ついでに、図9とその後の説明より、極限を考えるときは、値域の誤差の範囲を決めてから、その誤差に収まるように考えた方がよいことが解ります。「円は大地主」でも同じようなことが出てきましたね。この辺をよく考えておくといずれ役立つときがきます。
 
 
 
 なお、当然ですが、h(p) > 0 、h(q) < 0であっても、h(x) = 0となるx( p < x < q )は存在します。h(x)の代わりに−h(x)を考えればいいだけです。g 、hが( p ≦ x ≦ q )で連続で、g(p) < h(p) 、g(q) > h(q)ときは、g(x)−h(x) を考えれば、g(x) = h(x)となるx( p < x < q )の存在することが解ります。色々と応用ができますよ。
 
 だいぶ遠回りになりましたが、スネルの法則へ戻りましょう。
 
 
 
でしたから、y = f ’(x)のグラフは図5のようになります。y = f ’(x)は連続で、f ’(0) < 0 、f ’(c) > 0ですから、f ’(x) = 0となるx( 0 < x < c )は存在します。( x = 0 、x = cではf ’(x) ≠ 0ですね)
 
 まぎわらしいので、x =γのときに、f ’(γ) = 0とします。f ’(γ) = 0 に対しては、
 
 
が成り立ちます。これがスネルの法則でした。(第1章を読み返すとはっきりします)
 
 存在は示せたので、残る問題は、f’(γ) = 0のときに本当に最小になるかどうかです。 これには、f ’(γ) = 0 となるのは唯一つだけであることを示せばよいでしょう。そうすれば、 f ’(x) のグラフは図5のようになります。(この理由は自分でよく考えてみましょう)
 
 
 こうなれば、0 ≦ x <γで、f ’(x) < 0 、γ< x ≦ c で f ’(x) > 0 ですから、f (x) は 0 からγまで減少し、γから c まで増加します。つまりf’(γ) = 0となるγで確かに最小になります。
 
 それでは、f’(x) = 0を調べて行きましょう。
 
 
両辺を2乗して平方根を外しましょう。
 
 
 これは分母を払うと4次方程式ですね。4次方程式の解の公式はありますが、ごちゃごちゃして、行き詰まりそうです。まあ、v = wのときは2次方程式になりますが、これは、媒質が変ってないことになるので除外します。簡単なので自分でやってみましょう。(「結局、(18)の方程式を扱うなら、今までの苦労はなんだったんだ」という疑問を持つ人も多いかと。まあ、視点を一点に絞りつつ話を進めるためだったのだけど)
 
 (18)をよく見ると、文字の対称性に気づきます。y = c−xとおくと、0 ≦ y ≦ cとなります。ますますもって対称的ですね。
 
 
分母を払って、
 
 
ここで、v ≠ wとしたから、v > wか、v < wですが、v > wとします。逆の場合は、以下の式のまとめ方を逆にすれば同じになります。
 
 
yについて解いて(都合のよいことに、変数と定数は全て正だから符号を気にしなくてすむ)、
 
 
なんか、反って複雑になっただけだという意見は無視して、増減が解りやすいように少し細工します。(もちろん、x > 0のところで)
 
 
こうすると、xが増加すると、その2乗は増加、その逆数は減少、その平方根は減少、その逆数は増加ということが解りますので、グラフが書けます。
 
 
 さて、(5)の解は(18)の解で、これはまた、(22)とy = c−xを連立させたもの、つまりこの二つの交点になっています。存在は既に示されているので、これがただ一個であることが解ればよいでしょう。
 
 
x = 0 、cでの二つの関数値を比べれば、グラフは交差、つまり、連立方程式の解があることが解りますから(さんざん苦労してやったところですね)、あとは、ただ一個だと示せれば終わりです。これは簡単です。(22)は単調増加、y = c−xは単調減少ですから、もし、二個以上で交差していれば、後からの交差するyの値は、(22)を見れば、前の値より大きくなくてはならず(図11)、一方で、y = c−xは単調減少ですから、前の値より小さくなくてはなりません。こんなことありえませんから、結局二個以上というのはウソです。というわけで一個です。
 
 これで、めでたく、時間を最小にする点はただ一つであることが解り、スネルの法則が成り立つことが示されました。お疲れ様です。
 
 
3. 最速降下線(さいそくこうかせん)
 
 既に見たように、存在を示すのは面倒です。そもそも、大抵の場合、存在を示せません。せいぜいが限定的なときに示せるだけです。このように大変だということが解った上で、存在を仮定してテキトーにやります。(こんなこと考えないでテキトーにやってる人も多いです)
 
 
 最速降下線というのは、粒子が重力の影響のみを受けてA点からB点へ落ちて行くときに、時間が最小になるのはどんな曲線に沿って行くときかという問題です。粒子の速さが重力の影響を受けて変化するため、直線では時間が最小になりません。結果から言うと、放物線もダメです。では、どんな曲線ならいいのでしょうか。
 
 
 まずは、水平に薄くスライスします。そして、図14にあるようにそのスライス中での速さと角度をとり、赤線のように折れ線で近似します。非常に薄いので(厚さd )、そのスライス中では速さが一定としてよいでしょう。また、速さが一定のため、粒子は赤線の経路を通っていると考えられます。ここで時間が最小になるというのだからスネルの法則をこのスライスの部分に適用します。
 
 
 ここでは、(9)よりも(8)を使います。
 
 面白いことに、スネルの法則を使うと、角度のsinと速さの比が全て一定になりました。
 
 
 ここで、粒子の運動エネルギーと位置エネルギーについて考えましょう。
 
 
エネルギー保存の法則によって、運動エネルギー+位置エネルギーは一定ですから、図15のように、位置エネルギーの基準点と座標軸を鉛直下向きにとれば、(25)が成り立ちます。ここで、m:粒子の質量、g:重力加速度、h:鉛直下向きに計った高さ、v:hのときの速さです。
 
 
vについて解いて、
 
 
 
図14を見ながら、(24)を書き直すと、
 
 
図14の赤い線は接線に近づくので、結局、図16のように成ります。
 
 
図16と(27)から、
 
 
が成り立ちます。こうして、最速降下線は(28)の性質を持つ曲線であるとわかりました。もちろん、最速降下線の存在とか、折れ線近似できるということには目をつぶります。
 
 最速降下線が求まってよかった、よかった。えっ、よくないって。(28)を見てもさっぱり解らないって。それじゃー、なんとかしましょう。
 
 
4. サイクロイド
 
 まっとーに(28)の関数方程式を解こうとすると、地獄を見そうなので、(28)を満たす曲線を示して「ほら、こんな感じの曲線だ」とごまかすことにします。
 
 どうでもいいけど満員電車はイヤです。これがまた、人身事故だ、ポイント故障だ、信号機トラブルだ、架線にビニールが絡んだ、パンタグラフ故障だ、ドア故障だ、強風だ、大雨だ、雷だ、地震だ、濃霧だ、雪だ、線路脇で火事だ、急病人だ、ケンカだ・・・となにかにつけて遅れてろくなことにはなりません(今までに経験したことをちょっと思い出しただけでこれだけ出てきました)。
 
 駅で、「今日も行きたくねー。なんとかサボれねーかな」と思ってボーっとながめていると、ホームとホームの間の線路へ貨物がゆっくりと入ってきました。よく見ると、車輪のふち(円周)にポツリと白いペンキが塗ってあります。なにげなくながめていると、白い点の軌跡が見えます。
 
 この点の軌跡がサイクロイドです。ちゃんと書くと、円周上の一点に印を付けて、円板を直線的に転がしたときにできる軌跡てす。図17を見てみましょう。赤い線がサイクロイドです(円の半径をr 、角度θは図17のようにとり、軌跡を描く円周上の点を( x ,y )とします。要するに図17の通りです)。
 
 
すると、図17に書いてあるようにして、( x ,y )が求まります。
 
 
これがサイクロイドの式です。(θによるパラメーター表示です)
 
サイクロイドの性質を調べるために、まずは微分してみます。
 
 
微分係数の意味を考えましょう。
 
 
図18にあるように、微分係数の意味は、接線の傾きです。これは、xが1増加するとyがf’(a)増加するという意味です。接線とx軸の作る角をβとすると、図18の接点のところにある三角形を見て、tanβ=f’(a)となることが解ります。また、y軸と接線の作る角をαとすると、tanαはtanβの逆数になっています。これから、
 
 
となります。(31)と(30)から、
 
 
が出てきます。(32)の両辺を2乗して、
 
 
ここで、
 
 
が成り立つから、
 
 
となります。分母を払って、
 
 
展開して整理すると、
 
 
ここで、αはy軸と接線のなす角だから、0 ≦α<πなので、sinα≧ 0となります。図18をよくながめて考えましょう。
 
これより、
 
 
一方、(29)から、
 
 
なので、
 
 
となります。この式は、ズバリ(28)です。これで最速降下線はサイクロイドになることが解りました。まあ、細かいことには目をつぶりましょう。
 
 
5.アリ地獄
 
 さて、微分法というのは、変数をちょっとだけ動かして、関数値の変動を調べるものでした。どういうことかというと、凅を絶対値が非常に小さい数として、f(x+凅)−f(x)がどうなるかを調べることです。そしてまあ、f(x+凅)−f(x) ≒ A凅となるときに、微分係数をAとしています。実数で考えている限り割り算ができるので凅で割っています。
 
 
 ところで、極値などでは、f(x+凅)−f(x)がほとんど0となっています。もう少し正確に書けば、凅の変化に比べて変化が小さいということです。図19をよく見ると、同じ凅に対して、極値付近では変化が非常に小さくなっています。それで、極値を求めるときは、微分係数が0になるところが候補になっているわけです。
 
 同じ考えで、経路の関数になっているものはどうなるかを考えてみましょう。例えば、スネルの法則や、最速降下線では経路の関数として、経路を通る所要時間が問題となっていました。これらは時間が経路の関数になっいると考えてよいでしょう。
 
 
 そうすると、同じ考えで、経路lをわずかに変化させた経路をとってみます、とりあえず、そのわずかに変化させた経路をl+δlと書くことにしましょう。すると、F(l+δl)−F(l)がほとんど0であれば極値になっている可能性があります(δlの変化に対して小さい)。どう評価していくかという問題はともかく、微分法と考え方は同じです。違いは、変数が経路になっていることです。このようにして最大最小を扱っていくのが「変分法」です。本稿以外でも、たびたび名前が出てきましたが、この辺の考え方が解ればなんとなく納得できると思います。
 
 また、微分の逆演算として積分がありました。もちろん、積分法は重要な概念ですし、色々と役に立ちます。それなら、変分法の逆演算は何になるでしょうか。積分法からの推測では、経路自体を変数として積分みたいにするということになるでしょう。経路上の積分ではありません(これは線積分です)。あくまでも経路を変数として、色々な経路を考えて、それら全ての経路について積分みたいなことをするという意味です。積分法の推測から、何か重要で応用範囲の広いものになるらしいと予想されます。
 
 深みにはまればはまるほど、また色々と出てきて面白くなります。そしてまた深みに。正にアリ地獄です。
 

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平成19年7月25日
坂田 明治
 

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