第41話
 波はこんなに不思議
 

 
 
 
 
「主な対象読者」
 中学生から高校生くらいまでの年齢層を主な読者と頭のなかで描きながら、読者の身の回りにある事例を使いながら易しく波についての原稿を書いてみました
 
 
 
本 文 目 次
 
著作 尾田 鴻一郎
 

 
 
第41話 波はこんなに不思議
 
 わたしたちは、いろんなに囲まれて暮らしています。どんな波があるのか考えて見ましょう。波にはいろんな性質があってしかもその性質の多くは全ての波に共通しています。そしてその性質を利用してたくさんのことができるようになっています。また同時に波の性質によっては私たちが困ることもあります。波の種類と性質、そして私たちの身近にある便利なもの、困るものを見てみましょう。きっと波についてもっと知りたくなりますよ。
 
 
 
1.はじめに
 
        古池や
          かわず飛び込む
                  水の音
 
 
 松尾芭蕉の有名な俳句ですね。学校でも習ったことがあるかもしれません。この俳句を読んでみなさんは何を思い浮かべますか。静かな池の水面に広がってゆく波紋と、その音でしょう。そしてその音が聞こえるような静かなたたずまいでしょうか。
 
 ここに二つの波が目に浮かびます。水面の波と、音の波です。音も波の仲間です。水面の波は環を描いて広がって行くでしょう。もし池に杭があればその杭の後ろにも広がって行きやがて消えていきます。芭蕉はかえるが飛び込むのを、見たのではなく、家の中にいて音を聞いて、あ・・かえるがとびこんだな〜と思って詠んだような気がします。だとすると音は壁や障子を越えて芭蕉の耳にとどいたにちがいありません。
 
 波というと皆さんはほかにどんな波を思い浮かべますか。実は電波や光も波の仲間で、電磁波という種類の波です。その電磁波には電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線などという仲間がいます。わたしたちが毎日見ているテレビ、携帯電話、天気予報でよくきく気象レーダなどみんな電波という波を利用しています。遠赤外線ヒータなどということも聞いたことはありませんか。可視光線というのは私たち人間が見ることができる、いわゆる光です。夏になると天気予報で紫外線情報という言葉も耳にします。怪我をしたときや病気のとき病院でレントゲンをとってからだの中の様子を調べてもらいますが、これはX線を利用しています。
 
2.波の種類
 2.1 水の波
 水の波は水の表面付近の水が上下左右に動くことで起こります。かえるの俳句では、かえるが飛び込んだことで水が押し下げられます。その後反動で再び持ち上がって飛び込む前より高くなり、引力と反動によってまた沈んでゆきます。最初に押し下げられた水は下の方向だけではなく周りにも広がろうとし周りの水が持ち上がります。飛び込む前より高くなった水がこんどは周りの水を引っ張り周りの水面を引き下げる働きをします、そしてこのような働きが次々と繰り返し起こり、飛びこんだところを中心にして波紋が広がってゆきます。同じ点で見ていると水はごく近くを行ったり来たりしながら、水面の高さは上下運動をくりかえしています。これは波の一つの特徴で、波という現象は周りに伝わっていきますが、水そのものは近くで往復しているだけで、波が伝わっていって行く先まで動くということではないのです。遠くまで波が伝われば遠くにいる人にも波が来たことは分かりますが水がそこまで流れていったわけではありません。
 
 2.2 音の波
 音の波はかえるの体が水をたたく衝撃で空気が押されその部分の空気が圧縮されます。そうするとその部分の空気の圧力が上がりごくわずかですが温度が上がります。そして隣の空気を押します。押されたことで隣の空気の圧力が上がったところで、今度は最初の部分の空気の温度が下がります。そうすると空気は収縮し、お隣の空気を今度は引っ張ります。隣の空気は押されたと思ったら今度は引っ張られて圧力が上がったり下がったりします。そして先ほどの水と同様に隣の隣の空気も圧力が上下します。これを繰り返して空気の圧力の高い部分と低い部分が次々と生まれていきます。このようにして最初の衝撃が空気の圧力の高い部分(密の部分)と低い部分(疎の部分)が繰り返して伝わっていくのが音の波、つまり音波です。空気そのものはその部分で行ったり来たりしているだけで、耳まで動いてくるわけではありませんが、この疎密波が私たちの鼓膜を動かしたとき、私たちは音がしたと聞こえるわけです。
 
 水面の波と違うのは、水面の波は環を描きなから波紋が広がったのに対し音波は上にも下にも斜め上にも広がりながら、ちょうど球の直径がどんどん大きくなるように広がっていきます。これはこの次にお話しする電磁波(電波や光など)も同じです。
 
 音波の中で私たちが聞くことができるのは20Hz(ヘルツ・一秒間の振動数の単位)〜20,000Hzぐらいですが、その下は超低周波振動と言い、その上は超音波と呼んでいます。超音波は人間の耳には聞こえないのでうるさくなく、いろんな用途に使われています。
 
 お母さんのおなかの中にいる赤ちゃんを画面に映したり、海底のでこぼこを調べたり、海の中で魚の集団をみつけて効率よく魚をとるための魚群探知機、などの用途が超音波にはあります。そのほかに建物や機械の部品の中の亀裂や欠陥を調査する非破壊検査もできます。みなさんが直接見る機会は少ないのですが安全に生活するうえで超音波は欠かせないものとなっています。
 
 こうもりは飛行するときに超音波を出し、障害物から跳ね返ってくる超音波を聞きながら、真っ暗な洞窟の中でも安全に飛んでいけるということです。まるで飛行機がレーダで前方を確認して飛んでいるのと同じようです。こうもりは私たち人間が聞こえない超音波を発することも聞くこともできるのですね。
 
 2.3 電磁波(電波や光など)
 空中で電気の強さ(正確には電界)をプラスからマイナスへ或いはマイナスからプラスへ変化させると、それに従って磁気(正確には磁界)が生まれ、電界の変化に応じて磁界が変化します。電磁石に電流を流すと磁力が発生して鉄を引きつけるという実験に似ていますね。そして磁界が変化すると逆にそれに応じて電界が発生します。この電界と磁界の交互作用を次々に繰り返すことで電磁波は伝わっていきます。変化というのはプラスとマイナスを交互に繰り返すということです。
 
 音は圧力と温度の相互作用で伝わりましたが、電磁波は電界と磁界の相互作用で伝わります。音は圧力や温度を担う媒体として空気などが必要でしたが、電界、磁界は空気中でも真空中でも存在できるので、電磁波ではそういった媒体を必要とせず空気の中でも真空中でも伝わっていきます。太陽からさんさんとした光が届くのも、大気圏外の人工衛星からの衛星放送のテレビが見えるのもこの性質のおかげです。
 
 電磁波には電波、赤外線、可視光線、紫外線、>X線、ガンマ線があるということは先ほど書きました。これは電界(磁界)の変化の遅いものから順番に並べてあります。
 
 電磁波は真空中(空気中でもほぼ同じ)なら1秒間に300,000km(地球のまわり7.5周と同じ距離)を進みます。300,000kmは300,000,000mです。たとえば300mHz(メガヘルツ・1秒間に300,000,000回振動することを周波数300mHzといいます)という電波の場合、電波の1秒間に進む距離(m)を1秒間の振動300,000,000(回)で割ると1になります。この電波は1m進むごとに1回振動(プラスとマイナスが反転)していることになります。
 
 この電波を周波数300mHzの電波と呼び、電波のプラスマイナスが1回反転する間に電波が進む距離(1m)のことをこの電波(この場合は300mHz)の波長と呼んでいます。電磁波の速度が一定なら周波数で呼んでも波長で呼んでも同じなので、電波だけを呼ぶときは周波数で呼びますが、電磁波全体を呼ぶときは周波数で呼ぶと数字が大きくなりすぎて呼びにくいので波長で呼ぶことが習慣になっています。電波は0.1mmより長いもの、光は400nm〜700nm(nmは1/1,000,000mm)のものを呼んでいます。>
 
3.波の共通な性質
 3.1 エネルギーを運ぶ
 波はエネルギーを運びます。さんさんと輝く太陽の光、光が当たると当たった場所の温度が上がります。光に乗ってエネルギーがとどいています。真空の宇宙空間を越えて太陽のエネルギーが地球まで届くのは光をはじめとする電磁波という波がエネルギーを運んでいるからです。植物を含むすべての生き物は電磁波によって太陽から届けられるエネルギーを消費して生きています。皆さんはお家の電子レンジで食べ物を加熱するのに、食べ物を置いてスイッチをいれるだけで加熱できます。電子レンジの中で作るマイクロ波と呼ばれる電波がエネルギーを運んで加熱しています。太陽の光も電波も電磁波という波でした。
 
 音もエネルギーを運びます音の仲間の超音波の例を見てみましょう。みなさんが見る機会はすくないと思いますが超音波洗浄というものがあります。油にまみれた機械の部品のよごれは洗浄液に漬けただけでは落ちませんが、そこに超音波を送ると、こすらなくとも汚れの分子が動かされて部品からとれ、見る見るきれいになります。こすらなくても良いので、手や道具が入らない小さな込み入ったところまできれいにでき沢山の工場で使われています。
 
みなさんの身近では、時々めがね屋さんの店先で超音波洗浄の装置を使ってめがねのレンズを洗っているところを見ることができます。めがね屋さんの前を通ったら気をつけてみてください。そのほかに超音波のエネルギーで布やプラスチックをとかして接合する高周波ミシン、体の中に超音波を送り込んで手術をする装置などたくさんのものがあります。
 
 水の波でエネルギーを運ぶ例は津波です。遠くの何100kmものかなたの海の底で起こった地震のエネルギーの1部が波にのって運ばれてきて災害を引き起こします。地震があったところの水が流れてくるのではありません。ただ波が届くだけですが、私たち人間がたちうちできないほどの巨大なエネルギーを運んできます。しかも津波の伝わる速度はジェット旅客機と同じぐらい速いスピードということです。これは私たちにとっては困った現象ですが、波がエネルギーを運ぶ例です。
 
 3.2 反射と透過
 波というのは水面の場合は発生したところから同心円状に、また音や光の場合は上も下も右も左も前も後ろもあらゆる方向に、つまり球面状に広がってゆきます。そして何か障害物にぶつかるとそこでその障害物の中に入り込んで進む部分と、跳ね返さる部分に分かれます。入り込んで進むことを透過といい、跳ね返される部分を反射といいます。
 
 海岸が高いがけになっているところや、海中の小島に波が打ち寄せているところを見ていると、寄せる波と返す波が見られます。同じように太陽の光が窓ガラスに当たっているときに外で見ていると、太陽の光が反射してまぶしいことがあります。光の一部がガラスの表面で反射しています。でもそのとき窓ガラスの内側でも太陽の光が差し込んでいます。ガラスの表面で反射する光と透過する光に分かれているのです。でも鏡の場合はほぼ全てが反射してしまいます。反射と透過の比率は波を受け止める物体によっても波の波長によっても違います。
 
 電波は電子レンジでわかるように食物の中に透過、吸収、過熱しますが、金属のアルミホイルをまいた部分は透過しません。電子レンジジで熱くしたくない部分にはアルミホイルをまきますね。そうするとその部分は熱くなりませんが、それはアルミが電子レンジの電波を通さないからです。X線は人体を透過しますが、骨は透過しないのでレントゲン写真が撮れます。
 
 反射する光の方向はガラスに当たった光とガラスの表面の角度をちょうど折り返した方向に向かいます。みなさんも鏡に太陽の光が当たったときこのことを経験していると思います。鏡の角度をうまく調節すれば望むところを反射させることができます。むかし電話もなかったころは、遠くの城と連絡するのに鏡をつかって太陽を反射させて連絡したといいます。
 
 電波で通信する場合もこの波の性質を利用することがあります。マイクロウエーブと呼ばれる電波は途中に障害物があって直接見えないところには届かないのですが、見えないところ同士で通信したい場合、近くに高い山があってそこからなら見通せるというとときには、山に反射板という金属の板を立てて、電波を反射させて届けるということをします。ちょうど山に鏡を置いたのと同じですね。電波の場合は金属板が鏡の役割をします。
 
 衛星放送を受信するアンテナを見たことがあるでしょう。このアンテナには電波の取り入れ口と、中華料理で使う鍋のような反射鏡が組み合わされています。この反射鏡は凹面鏡になっていて、凹面鏡にとどいた電波のエネルギーの全てを取り入れ口に向かって反射する形になっています。取り入れ口だけで取り込む場合の100倍から1000倍の強さの電波を取り込むことができるようになっています。この凹面鏡のおかげで35,786kmという遠くの人工衛星から送られてくる、ごく弱い電波でも鮮明な映像を受信できるのです。
 
 反射は音でも起こります。山びこは音が遠くの山に反射してその一部が呼びかけた人の耳に戻って聞こえるものです。天井の高い建物や、洞窟で手をたたいたりして音をたてるとビンビン響くのも音が壁や天井に当たって反射するためです。この場合は一度反射した音が二度も三度も反射し、重なって聞こえるため複雑な音になってきこえます。
 
 みなさんはテレビの天気予報で気象レーダの画面を見たことがあると思います。気象レーダも電波という波が反射するということを利用しています。高い山の頂上に置いた気象レーダから電波を水平にグルグル回転するアンテナを使ってあらゆる方向に飛ばします。もし雨雲があればその中の水滴に電波が当ってその一部が反射して戻ってきます。電磁波は一秒間に300,000km進むとわかっていますから、電波を発射してどれぐらいの時間で戻ってきたかを調べれば、その雨雲とレーダの間の往復の距離がわかります。
 
 受信したときのアンテナの角度からどの方向から帰ってきた電波かが分かるので、例えば1/1,000秒後に戻ってきたら、そのときレーダアンテナが向いていた方向の、レーダの場所から往復300kmつまり150km離れたところに雲があるということで、雨雲の位置を知ることができます。これを地図の上に描いたのが気象レーダの画面です。そして気象レーダでは次に述べるドップラー効果という波の性質を利用して雨雲が気象レーダから離れて行っているのか近づいているのか、その速度はどれぐらいかもわかります。
 
 3.3 ドップラー効果
 消防車がサイレンやピーボーを鳴らしながら、通り過ぎると、通り過ぎたとたんに音が低く聞こえることはよく経験するところです。ホームにいて通過する電車の警笛も同じです。
 
 消防車が仮に時速60kmでA君の方に向かっているとします。消防車は1秒間に約17m近づきます。音は標準状態(20℃、1気圧)で340m進むことが確かめられています。これは音源である消防車が止まっていても動いていても同じです。消防車がA君から340mはなれたところで出した音をA君は1秒後に聞くことになります。ところがその1秒間に消防車は17m、A君に近づいていますから、1秒後に消防車が出した音は近くなった分だけ早く、1秒かからずにA君のところに届いてしまいます。その時間は17/340つまり5%短くなっています。
 
 1秒間の振動数をHzという単位で呼ぶということを電磁波のところでお話しました。音も同じように呼びます。音は空気の圧力の高い部分(密の部分)と低い部分(疎の部分)が繰り返して伝わっていくとうことも前にお話しました。
 
 疎と密の繰り返し、つまり消防車の出している音が仮に440Hz(ピアノのラの音)だとするなら、1秒間に消防車は 440回疎密を繰り返す音を出したのですがA君の耳には1秒間の95%の時間に440回の振動が届いてしまいます。これを1秒間に換算すると、463回(440÷0.95=463)繰り返す振動がやってきたことになります。つまり463Hzの音を聞くことになります。ピアノのラとシの間の黒鍵のラのシャープ(#)の音が466Hzですからこれとほとんど変わりません。A君は半音高い音を聞いたことになります。また消防車がA君から遠ざかるときにはこれと反対のことがおこって消防車が出している音より低く聞こえるというわけです。
 
 ドップラーという人がこのような理由で音が高く聞こえたり低く聞こえたりするということの仕組みを見つけ、実験で確かめたりしたことから、ドップラー効果と呼んでいます。
 
 先ほど述べた気象レーダは消防車の場合と違って自分が出した電波と反射して戻ってきた電波の周波数のちがいをしらべて、雲がレーダの方に近づいているのか、遠ざかっているのか、その速さはどれぐらいかということを計算しています。この性質を利用しているのは、気象レーダのほかにも沢山あります。皆さんの身の回りでは、野球場でピッチャーの投げるボールの速度を量るスピードガン、お巡りさんが速度違反の取締りに使っているレーダなどです。天文学でうんと遠くの星が地球からどれぐらいの速さで遠ざかっているのかを知ることなどもこの波の性質を使って調べているということです。
 
 3.4 干渉(合成、うなり、打消し)
 みなさんは木漏れ日で、木の葉っぱと葉っぱの間から幾筋もの光がもれてきて、葉っぱが風に揺れると、地面やたたみに映った明るい形や陰の形がただ葉っぱのゆれ以外に不規則に変わることに気付いた人はいませんか。陰と陰が重なった部分に同じ陰の部分でも暗くなったり、明るくなったりする部分があります。
 
 これは干渉と呼ばれることがおこっているのです。もとは同じ太陽の光ですが、葉っぱと葉っぱの小さなすきまを通ってきた光の周辺が地面や畳の上で重なったとき、足しあったり、打ち消しあったりするために明るいところや暗いところが生まれます。
 
 2つ以上の波が重なると波と波が足しあって強くなったり、引き合って弱くなったりします。さらに重なる電波の周波数が異なっていると周波数の差に等しいうなりを生じます。こういう性質のことを波の干渉と呼んでいます。この性質、干渉は私たちが波を利用する上で困ったことになる場合と、上手に利用して活用できる場合とがあります。
 
 まず困ったことになる場合を見てみましょう。
AMラジオ、特に短波放送で遠くの放送局を受信してみましょう。音が大きくなったり小さくなったりするこがあるのに気がつくことがあります。このことをフェーディングと呼んでいます。フェーディングには幾つかの原因がありますが、その一つがこの干渉です。放送局のアンテナからでた電波を直接受信するほかに、反射してきた電波を一緒に受信してしまって、その二つの強さがあまり変わらない場合に起こりやすくなります。とくに海上を電波が通ってくるときに激しく起こります。
 
 夕日が海に沈んでいくとき海面にも夕日が真っ赤に映っているのを見たことがあるでしょう。そのときみなさんは太陽そのものと、海面に映った夕日との両方に照らされます。これとおなじことが電波でも起こるのです。海面や地面で反射してきた電波と直接の電波の両方を受信するとき、その経路が温度や反射する点が変ると経路の長さがかわるために足しあう関係になったり引き合う関係になったりして変化し、時には全く受信できなくなったりします。もし二つの経路の電波を全く同じ強さで受信したとすれば足しあうときは強さが2倍になるだけですが、引き合う場合は0になって通信ができなくなってしまいます。とても困ったことになります。
 
 どうして足しあう関係になったり、引き合う関係になったりするのかということを知るためには三角関数という数学の位相という知識の助けを借りることが必要になります。
 
 次にうまく利用している場合を見てみましょう。
船が水面を進んでいます。船首で水を切り分けて進んでいきます。船の両側には波が立ちます。船の航跡の両側に波が広がっていきます。白波を蹴立てて高速で航海する船は見ている分には勇壮ですが、船の推進力となるべきエネルギーが波を作るエネルギーに消費されてしまいます。波を作りたくはないのですがどうしてもできてしまいます。そのため昔の高速船は船の船首をできるだけ鋭くしなるべく波ができないようにしてきました。
 
 しかし限界があります。そこで日本海軍は波を打ち消せないものかと考えました。つまり船の一部にわざわざ波を作るしかけを作って、しかけで作った波と船自身で出来てしまう波を打ち消せないものかと考えました。船の先端に丸いコブを作ってわざと波を起して船が起す波と打消すことにしたのです。その第一号が戦艦大和だといわれています。戦艦大和は沈んでしまいましたが、その速度はその時代の戦艦にくらべたいへん速くまた燃料消費も少なかったといわれています。
 
 この技術をそなえた船を球形船首船と呼び、いまでは世界中の船で使われていて、速度や燃料費だけでなく高速航海したときの安定性にもすぐれているそうです。
 
 皆さんの身の回りにあるものでは、レンズです。カメラやめがねのレンズの表面を見ると緑や紫色光ってに見えることに気がついたことはありませんか。窓ガラスなどのガラスと違いますね。ガラスを光が通過するときその何分の一かの光が反射してしまいます。カメラもめがねも光をできるだけ沢山取り込みたいので反射してほしくありません。そこでレンズの表面に薄い幕を作って(コーティングと言います)わざわざ反射を起しレンズのガラス表面で反射する光を打ち消してしまいます。これによってほとんど反射が起こらないのと同じ状態にしてしまうのです。
 
 さきほどの船の球形船首の考え方と似ていますね。透過率を96%から99.8%に改善できるということですからすごい効果ですね。とくにカメラのレンズは何枚も重ねています。反射はレンズに入るとき出るときに発生するのでそのつど4%のロスがあると6〜7枚も通過すると全体で50%ぐらいになってしまいます。
 
 このほかに音の例では、ノイズキャンセリングまたはノイズリダクション型のイヤホンが最近売り出されています。外部の雑音をマイクで捉え増幅した上、外部から耳に届く雑音を打ち消すように処置、イヤホンに加えて打ち消し、外の雑音を聞こえにくくして、イヤホンの音を楽しめるようにしたものです。これと同じ仕組みが大きな劇場でも使われていて、おおきなスピーカを使って空調機の雑音を打ち消し、静かに芝居や音楽が楽しめるようにしているということです。
 
 さあ〜 どうですか。波って水面、音、電磁波と、波を媒介する物は全く違い、波が伝わるしくみも違うのに、そこに伝わる波の性質は共通なのです。なぜなのでしょうか。不思議ですね。
 
 そしてその性質や特徴を示すものは私たちの身の回りにたくさんあって、しかもその特徴を利用することで私たちはいろんなことを知ったり、役立てたりしているのです。また波の性質をよく知らなかったために困ったことになったこともたくさんあります。ここでは波の性質のすべてをお話しすることはできませんでしたが、ほかにも回折、共振、分波、変調といった幾つかの性質があり、なぜその性質を持つのかということも研究されて分かっています。今皆さんが使っている携帯電話も、毎日楽しんでいるテレビ電波という電磁波の波の性質を利用して成り立っています。
 
もっとくわしく波のことを知りたいと思いませんか。
 
 
平成20年2月18日
著作者 尾田 鴻一郎(おだ こういちろう)
 

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