第66話
 分解と組み立ての話
 

 
「主な対象読者」
 今回の対象者は小学生以上です。
「読者への期待」
 こちらの意図は、「工事現場の観察日記」です。
多分まだ誰もやった事が無いと思われるので、面白いものになると期待できます。自然観察だけが観察ではなく、人を観察することや、人が何かを作り上げていく過程を観察すれば、必ず新たな発見があると思いますが、どうでしょうか。
 
本 文 目 次
著作 坂田 明治
 

 
 
第66話 分解と組み立ての話
 
1.立方体の展開図
 今回もまた、工事現場ネタです。最初は展開図から始めて図形を分解し、元の図形の性質を考えようと思っていたのですが、家を建てている工事現場を見て気が変りました。こっちの話なら、プラモデルや木工模型、紙細工などを念頭におけばいいので、小学生辺りからが対象となっていいかも。(しかもこの章と次章の内容は紙とハサミとセロテープなどがあれば簡単にできます)
 
 とりあえず、立方体の展開図です。
 
 
 図1の左にある立方体の展開図が右です(展開図は何種類かあるので、どの展開図を用いても以下の話は同じです)。図1の左にある立方体の辺をうまく切ると、右にある展開図ができます。また、右の展開図に書いてあるように、折って貼り合わせると左の立方体となります。紙に展開図を書いて作ってみてください
 
 次に、展開図を更に切ってみましょう。
 
 
 図2のように、展開図を更に切って6枚の正方形に分解しても、図2にあるように貼り合わせれば展開図に戻ります。もちろん展開図からは、図1のように貼り合わせて元の立方体ができます。結局、立方体は6枚の正方形でできているのだから、この6枚の正方形をうまく貼り合わせれば立方体になるということですね。
 
 
 立方体の各面を切り離して、6枚の正方形を作ることは簡単です。各辺を全部切ってしまえばいいからです。しかし、逆に6枚の正方形を貼り合わせて立方体を作るのは少し考えなくてはなりません。いい加減に張り合わせても立方体にならない場合があるからです。
 
 
 ここで、プラモデルや木工模型などを作ってみれば解りますが、部品にA100などの記号が付いています。そして図面を見ると、A100をどこへどんなふうに付けるかが書かれています(もちろん部品を適当に加工してから付けることもあります)。そして、図面通りに作っていけば完成するはずです。(実は、よく失敗して完成しなかったもんね)
 
 プラモデルや木工模型の製作を参考にして、キチンと貼り合わせる場所を決めておきましょう。いきなり立体図形で考えると解りにくくなるので、まずは、図2の貼り合わせ方で考えてみましょう。
 
 
 図5は正方形の頂点に番号を付けたものです。同じ番号のところを張り合わせると考えれば、図2の貼り合わせ方と全く同じです。番号が飛んでいるのは後の都合です。
 
 とにかくこれで正方形を貼り合わせて展開図を作ることはできたでしょう。次の目標は、当然、6枚の正方形を貼り合わせて、直接立方体を作ることですね。
 
 まずは、立方体の頂点に番号を付けましょう。(一応、図5の貼り合わせの番号と合わせてあります)
 
 
 これもいきなりやると解りにくくなるので、図5に番号を書き加えるという形で番号付けします。
 
 
 図7のように全ての正方形の頂点に番号付けをすれば、同じ番号のところを貼り合わせて立方体ができます。これは紙に書いて実際に貼り合わせてみてください
 
 これを整理して図8のように書くといきなり解りにくくなります。今までの流れから、図7の方が解りやすいですね。
 
 
 他の人に図8を渡して、「同じ番号のところを貼り合わせれば立方体になるのが解るか?」と言ってみるのも面白いと思います。
 
 とにかく図8を元に、順を追って貼り合わせていけば立方体ができます。一歩進めて、イメージトレーニングのつもりで、頭の中で貼り合わせてどんな具合にできていくかイメージできるように訓練しましょう。やがて役に立ちますよ。
 
 
2.色々な図形と貼り合わせ
 ここでは色々な図形の貼り合せを考えてみましょう。必ずしも立体図形だけではありませんよ。
 
 まず、簡単なところでは、正四面体を前章のように面に分解することです。
 
 
 正八面体も同じようにして、8枚の正三角形に分解できます。色々な立体図形を考えて、それらを分解してみてください。もちろん、元に戻せるように、貼り合わせる頂点には同じ番号を付けましょう。すぐに、一見しただけでは何になるか解らない図形ができますので、友達などに同じ番号の頂点を貼り合わせると何になるか問題を出してみると面白いですよ。
 
 直線的な図形ばかりでは面白くないので、今度は曲線的な図形を考えてみます。
 
 
 図10の左は円錐です。面倒なので底面なしです。これを図にあるような母線1−2で切って開くと右図のようになります。1は共通ですから、2を貼り合わせると円錐に戻ります。これに、底面を付けておけば、よくあるように円錐の展開図になりますね。
 
 
 図11の左は円筒です。円筒なので底面はありません。これも図にあるような母線1−2で切って開くと右図のようになります。それぞれ同じ番号の部分を貼り合わせると円筒に戻ります。これも、底面を付ければ、よくあるように円柱の展開図になりますね。
 
 ここで、図11の右図に少しいたずらをしてみましょう。
 
 
 図12のように貼り合わせる番号を入れ換えてしまいます。これを貼り合わせるとどうなるでしょうか。ひねって貼り合わせることになりますね。紙が短いとやりにくいので、もっと細長くしてやってみます。
 
 
 結局、できたのはメビウスの帯です。
 
 以上から、貼り合わせ方を変えると全く違った図形になってしまうということが解りました。ということは、図形の性質を考える上で、元の図形を分解し、元に戻せるように貼り合わせ方を指定しておけば、分解した図形と貼り合わせ方から、元の図形の性質が解るということですね。
 
 このように、分解して、ものの性質を調べるということは将来必要になってきます。そういうことを意識しておいた方がなにかのときに役立つでしょう。
 
 
3.巨大構造物(家とか橋など)の輸送
 さて、図形を分解して調べられそうだということを前章でやりましたが、分解にはもっと別の使い道もあります。
 
 家とかビルや橋などの巨大な構造物を考えてみてください。これらの完成品は直接輸送することなんてできませんよね。そういえば、昔、「サンダーバード」で、ビルを直接移動させようとする話がありました。確か、輸送の途中でビルが倒れてしまい、その際に地割れが起こって、報道関係者が地下の空洞に閉じ込められてしまうのだったと思います。
 
 それはともかく、巨大な構造物をそのまま輸送できませんから、分解して、部品を輸送し、現地で組み立てるという方法をとる以外にありません。ただし、一回作ってから分解するということはしません。設計者の頭の中にある完成形を部品に分解し、実際の部品を現地へ輸送して組み立てるのです(現地で加工するものもあります)。この際に、設計図が、第一章でのどこをどう貼り合わせるかが書かれたものに相当します。この対応付けが理解できるようになるにはやはり訓練が必要です。第一章の終わりに書かれている部分も読み直して参考にするとよいでしょう。
 
 
 まあ、こんな大規模な例でなくとも、身近なところでは、組み立て式本棚などがありますね。本棚に組みあがってしまっては、けっこうかさばって移動させるのが面倒でも、部品の状態では平べったいダンボール箱に入っていて、持ち運びが簡単でしょう。そして、図面に書いてある通りに部品をつなげていけば完成します。結構、プラモデルや木工模型、紙細工などで使われていた手法が役立っていますよね。
 
 
4.おわりに
 良いか悪いかは別として、工事現場をよく観察してください。物作りに関する人間の英知(えいち)が詰まっています。家の建設工事では、鉄パイプで足場を組んでいるのが見られるでしょう。鉄パイプ、止め具、踏み板にする鉄枠付きの板などは、重ねてしまうと、コンパクトにまとまります。つまり、簡単に輸送できるものです。しかしながら、家を取り巻くように設置され、そういう意味では巨大な構造物ともなります。
 
 足場を組み立てているのをよく見かけますが、慣れと感で組み立てているような感じです。頭の中には、これから組み立てる家のことがイメージされていて、どのように足場をくみ上げれば必要な作業ができるのかが解っているということでしょうか。
 
 現場の人間が意識しているかどうかは別として、家を建てるのに、どの段階でどこから手を加えられるようにしておくかという計画性は必要でしょう。それにうまく対応しているようにも思えます。
 
 みなさんが将来どうなるかは解りませんが、何かをするときに、キチンと段取りを立てなければならない時が来ると思います。その際に、対象となるものだけではなく、それをサポートする体制まで考えておいたほうがよいと思います。これが工事現場で足場の組上げを見ていて感じたことです。
 
 
平成21年7月25日
著作者 坂田 明治
 
 

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