第96話
 隙間風(すきまかぜ)の話
 

 
「主な対象読者」
あまり年齢に関係なく、日常見られる現象へ興味や好奇心を持つ人たちを対象としました。難しいことは何一つありませんので気楽に読めると思います。
 
「本稿の目的」
誰でも簡単にできる実験を中心としています。そして、一見不可思議に見えても、よく考えると常識の範囲内に入ってくる現象に焦点を当てています。挫折しても、すぐには諦めず、根本から考え直していくことを知ってもらうことが目的です。
 
 
本 文 目 次
 1.はじめに
 6.おわりに
 
著者 坂田 明治
 

 
 
第96話 隙間風(すきまかぜ)の話
 
1.はじめに
 今回は、隙間風(すきまかぜ)の話です。隙間風と言っても、びゅーびゅー音を立てて入ってくるものの方ではありません。このような場合は、本当に隙間があるので、それを見つけて目張りをするなどの対策が立てられます。それに対して、ここで対象とするのは、高性能サッシなどを使い、建てつけもよく、隙間などないはずなのに入ってくる隙間風です。
 
 
 窓際ごろ寝しているときに、背中に隙間風を感じたことはないでしょうか。隙間風を感じた経験のある人なら、大体、窓枠の下の方から入って来るように感じたはずです。ただし、日中、陽が入ってきているような場合、ぽかぽか暖かく実験になりませんので、夜とか、曇りの日に窓際でごろ寝をして実験した方がよいでしょう。この際に、外で風が吹いているかどうかはあまり影響しません。
 
 なお、実験するときは風邪を引かないように注意して行いましょう。
 
 
2.まず実験してみよう
 さて、図1のような場合、まず最初に疑われるのは、外からサッシの隙間を通って風が入ってくることです。
 
 実験にはお線香が1本あればよいでしょう。夜では解りにくいので、昼間、曇りで風が吹いていないときを狙います(ここでの隙間風は、外で風が吹いていない場合でも生じます)。もしどこかに隙間があって、そこから隙間風が入ってくるとすると、お線香のが家の中へ流れていくはずです。
 
 
 図2のように、窓枠全体についてお線香の煙の流れを調べても、全く家の中へ入って行かないことが確認できると思います。
 
 そうすると、一体どこから隙間風が入ってくるのでしょうか。いきなり挫折してしまいました。
 
 
3.熱現象を知ろう
 もし、外から風が入ってくるのでないとすると、それは家の中に原因があるはずです。
 
 風は空気の流れですから、空気について考える必要がありそうです。
 
 空気は暖めると膨張します。これは体積が増えるということですから、密度が低くなります。そうすると単位体積当たりの重さは軽くなりますので、上へ移動します。もう少し詳しく書くと、暖められていない空気より軽いので、暖められてない空気の上に浮きます。水に木など、水より軽いものを入れると浮くのと同じです。
 
 こうして、暖められた空気は上へと流れます。
 
 また、逆に、空気を冷やすとどうでしょうか。空気は冷えると収縮します。これは体積が減るということですから、密度が高くなり単位体積当たりの重さは重くなります。そうすると下へ移動します。水に鉄の塊を入れると沈むのと同じですね。
 
 こうして、冷やされて空気は下へと流れます。
 
 この章の熱現象はこれが全てです。「熱現象を知ろう」なんて、たいそうな タイトルを付けてこの程度です。大したことありませんね。
 
 
4.暖めるには、冷やすには
 ですが、我々は前章で書いたことの半分しか使っていません。
 
 まずは、お湯を沸かすときを考えてみましょう。
 
 
 図3のように、お湯を沸かすとき、炎の上にやかんを置きます。これは熱源を極めて有効に活用していますね。炎によって直接暖められるばかりではなく、周囲の空気が暖められ、上昇するときにやかんを包んで流れ、この空気からも暖められます。こうして、炎だけではなく、炎によって暖められた空気をも利用してやかんを暖めているのです。
 
 
 ものを冷やすときはどうでしょうか。図4はよく見かける光景です。氷の上にものを置いて冷やしています。確かに氷と接触している部分は冷えますが、氷によって冷やされた空気を利用していませんね。
 
 
 ものを冷やすのであれば、氷の下に置く方が効果的です。氷によって冷やされた空気、つまり冷気によっても冷やされます。
 
 
5.隙間風の正体
 さて、熱現象を考える上で、もう一つ重要なことがあります。それは、物体を暖めるにせよ、冷やすにせよ、必ず表面から暖まるか冷えるということです。
 
 
 図6の赤い矢印を熱と考えましょう。熱が物体に進入するには、必ず物体の表面からしかできません。直接内部へワープすることなんてありえませんね。
 
 魚でも、餅でも、何かを焼いたことのある人ならよく知っていると思いますが、表面が焦げたからといっても中は生ということがあります。中まで火を通すには、じっくり火にかけなければなりません。これは、熱は表面からしか進入できないためです。
 
 また、逆に、冷えるときも、表面からしか冷えません。池や水たまりに氷が張るときを考えてみましょう。必ず、水面から張っていきますよね。
 
 とにかく、熱は進入するにしても、逃げるにしても表面からということです。
 
 ここまでくれば、隙間風の正体が解ります。
 
 部屋の中の空気の流れを考えましょう。熱源を特に用意しなくても、人や家電が熱源となります。熱を発していますので、暖められた空気は天井へ昇っていきます。手っ取り早く実験をしたいときは、適当な熱源を用意しましょう。
 
 そして、窓からは熱が逃げていきます。もちろん壁からも逃げていきますが。こうして、窓際で熱を失い冷やされた空気は下降します。
 
 
 この空気の流れが隙間風の正体です。丁度、窓際でごろ寝をすると、冷やされた空気が体に当たります。
 
 ここで、空気の流れを見るには工夫が必要です。お線香の煙ではうまく行きません。風船に重りをつけて、ぎりぎり浮いていられる状態にして、空気の流れに軽く流されるように調整すればよいかも知れません。まあ、何か方法を考えれば自由研究の材料になるでしょう。
 
 
6.おわりに
 毎度のことですが、「隙間風ならどっかに隙間が出来ているのだろう。」などと決め付けてほったらかしにせず、一応は疑って考えるようにしましょう。
 
 今回は、隙間風と思っていたものが、実は室内の空気の流れだったという落ちでした。この例に限らず、安易に決め付けるのは危険です。
 
 そして、暖めることと、冷やすことを考えたときのように、人間の行動は、理にかなっているものもあれば、理に反しているものもあります。しかも、理に反した行動が習慣化していたりもします。
 
 習慣化した行動を変えるのは容易ではありませんが、理にかなっていない行動であると認識できれば、なんとかなりそうな気もします。この点、本稿を読まれた方はどうお考えでしょうか。
 
 
平成27年11月27日
著作者 坂田 明治(あきはる)
 

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