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43.フランス人のお弁当 6-15-97.

  パート1.  フランス人は、食事を楽しむことでは世界一かも知れません。朝食はコンチネンタルスタイルで簡単に済ませますが、中学校の給食でも昼食には驚くほど立派な食事をとります。会社や大学の食堂での昼食は、カフェテラス形式が多いようですが、ステーキと赤ワインを時間をかけてゆっくりと会話を楽しみながらとります。その後かなり強いアルコールを飲む人が多いようです。

  パート2.  パリにあるパストゥール研究所に客員研究員として滞在していた時に見聞きした食堂の風景について紹介します。研究所の職員用カフェテラスを利用するには、先ず事務室で必ず身分証を提示して、人により色の違う食券の綴りを購入します。お昼になると白衣等の作業着を外出するときと同じように男であれば背広に着替えます。そして、日本語に訳すと「サヨウナラ」と挨拶をしてカフェテラスに三々五々出かけます。カフェテラスでは、魚料理、ステーキ、ワイン、何でも好きな料理を好きなだけ全員1枚の食券で購入できます。知っている人が来ると席についていようが、口に料理が入っていようが、「コンニチワ」と言いながら手を伸ばして握手の連続になります。

  パート3.  パストゥール研究所も他でも同じでしたが、トイレには大きな風呂敷き(昔流に表現するとフンドシ)みたいな手拭き布が1枚ぶら下がっていました。時に掃除のオバサンが交換しているようです。この布が濡れていることがあまり無いようなのです。何時トイレに行っても乾いていました。もしかするフランス人は、トイレで用を足しても手を洗わないのではないかと思われます。またフランス人は、帰宅途中にフランスパン等を含めて買い物をし、地下鉄等を利用してアパートに帰りる人が多くいました。扉の鍵をバック等から取り出す為に、あの長いフランスパン・バゲェを入り口前のコンクリーの床に直接置いて扉の鍵を開ける風景をよく見かけました。

  パート4.  トイレで用を足した後洗ってないと思われる手で誰とでも握手をし、その握手をした手で千切って食べるフランスパンの味はなんともいえない美味なのです。所が時たま抜打ちにカフェテラスで身分証明書の提示を求められます。最初は何の目的で身分証明書を示す必要があるのか判りませんでした。パストゥール研究所の食券は、身分によって色と値段が違ったのです。食べるものは同じでも払う金額は身分によって皆違う。日本では考えられませんが、これがフランス式自由と平等の精神の発露なのでしょうか。食券を購入するときに身分証を提示するのは、徴収する金額を確認し、金額に相当する色の食券を渡す為に必要な手段でありました。

  パート5.  私は日本国から海外研修費という公金を頂いていましたので、パストゥール研究所からは給料を貰って居ませんでした。客員研究員である私の身分証明書には金色の線が斜めに1本あり、直径が1センチ程の赤い丸が1個付いていました。食券は赤い色でした。他のフランス人、例えば教授の身分証明書よりも私の身分証明書は金線が入っている分立派なものでした。ところが後で判ったのですが、この立派な金線がいけませんでした。無給の私は教授よりも高い金額を払わされていたのでした。研究所が言うには、貴方は客員(好意あるお客という意味らしい)なのですから高いのは当たり前ですと。

  パート6.  日本人は税金を払うことを「税金を取られる」という表現を良く使います。フランス人は、税金を払うこという表現に英語で言うcontributeと同じ単語を使います。意味としては皮肉なのでしょうが「貢献する」となります。会話を聞いていますと「こんなに高額の税金を国に貢献している」と嘆いているのです。奇妙な会話ですが、客員とオダテテ高い金額を払わせるのと同じで、フランス流経済学は難しい。



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