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53.口の中に百億個の細菌がいる!.7−22−97.



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 細菌を初めてながめた人は、オランダ人のアントニー・レーウェンフックという人です。いまから250年ほど前のことです。レーウェンフックは、1632年オランダのデルフトに生まれました。レンズを磨くことが好きで、独学できわめて簡単な顕微鏡を造り上げました。その拡大力は、270倍に達したようです。オランダのライデン工科大学にいきますと、世界で最初の顕微鏡のコピーを買うことができます。彼は手作りの顕微鏡を使って、シコ(歯垢)や汚水などの検査をしては、いろいろいな形をした細菌を視て独りで楽しんでいました。彼は毎朝食塩でキレイニ歯を磨いていましたが、それでも口の中に細菌が生活しているといっては喜んでいたようです。ある老人が、生まれてこのかた、歯を磨いたことがないというのを聞いて、「おお、その臭い口の中には、さぞ色々な細菌が繁殖しているだろう」とワクワクしながらそのシコを分けて貰い、すぐに自分で作った顕微鏡を用いてのぞいていた。

 アントニー・レーウェンフックについては、志賀潔先生の書いた「細菌学を創ったひとびと」の第一番目に紹介されています。興味のある方は、「北里柴三郎博士の秘話」を開き、その中にある「細菌学を創ったひとびと」を見て下さい。目次がありますが、その最初がアントニー・レーウェンフックです。

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 私達のからだにどの位の数の細菌がいるのでしょう。レーウェンフククは、細菌を眺めて楽しんでいましたが、細菌の数については触れていません。微生物学の教科書によると、正常人の皮膚には10の12乗個(1兆個)の細菌、口の中には10の10乗個(百億個)、また腸管の中には10の14乗個(百兆個)の細菌が生息していると記載されています。

 顔の表面の菌数は、男女、年齢、体の大きさ、その他により違います。女性の方が男性より、栄養分の多い化粧品を使っている女性は使ってない女性より、カミソリでヒゲを剃った後の方が夕方よりは、一般に菌数は多いようです。口の中の細菌数は、食事の前後、ヤケドしそうに熱い紅茶を飲んだ前後、病気の前後、その他でも、大きく違います。しかし、例外なく言えることは、口の中も細菌だらけで、決して無菌的ではないということです。

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 若者のファッションなのでしょうが、カン、ボトルまたは紙パックなどに入っているビール、牛乳、炭酸飲料、お茶などを、カン、ボトルまたはパックなどに直接口を付けて飲んでいる人達、または手に持っている若者達を良く見かけるようになりました。テレビの宣伝でも良くやっています。「フランス人のお弁当」にも書きましたが、衛生についての考え方は、国により人により違います。

 微生物的に考えると、カンやパック等の容器を洗ったりぬぐったりもしないで直接口を付ける事がまず「キタナクバッチイ」、次に何回かに分けて飲むとダエキとともに残りがカンやボトルに戻り、そのうえ残りをしばらくもってると口の中の細菌が段々と蓄積されてくるので「よりキタナク」なります。イッキに全てを飲みほすのであれば、口を付けることは別にして、細菌が蓄積して段々と多くなることだけはないでしょう。行儀が悪いのみならず、あの行動だけは「キタナイ」の一言につきます。

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 洗ったり表面を拭フいたりしないで、カンやボトルに何のていこうもなく口をつけられる人達は、大切な眼に装着いるコンタクトレンズを手でさわり、お化粧に使うパフは汗臭く雑菌だらけでも平気のようです。ところが、奇妙なことに他人が使用した電話機、便座、ボールペンはキタナイと感ずるようです。マナイタからはじまってなんでも抗菌商品がいいらしい。

 それなら、ご飯の茶碗チャワン、箸ハシ、お皿まで全て抗菌にしたらどうなのでしょう。除菌商品が飛ぶように売れているそうですが、大変に矛盾ムジュンする話に私にはおもえてなりません。なにか可笑オカしな気がしませんか。ボールペンが抗菌であるより、ハンカチが抗菌であるのなら話は別でしよう。

 いずれにしても無菌のものはこの世には殆どないし、また無菌である必要がそもそも無いと思います。なにもしないでカンに直接口をつけるのは、ヤメタ方が良いと思います。しかし、電話機、便座、車、ボールペン、壁紙、マスク等が抗菌処理してあると、その処理の仕方によっては健康に良くないかもしれません。抗菌もホドホドにしましょう。

 抗菌の2文字は、完全や安全を意味しませんし、また保証もしてくれません。抗菌に惑わされないように賢くなりましよう。



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