▲▲ ▼▼

63.お化粧の起源.9-18-97.

本文中の亜鉛は鉛の誤りでした。謹んで訂正し、お詫び申し上げます。また、ご指摘下さった方にお礼申し上げます。1998.9.2 編者

その1.魔除けと勇敢さ

 未開発の地域やジャングルなどに住んでいる先住民は、顔のみならず全身に色鮮やかに化粧をしている写真や映画などを見かけます。普段の生活とは別に、特別なお祭りや宗教的な儀式のときに、色々な色の化粧をほどこしたり、極楽鳥の飾り羽根、動物の骨や貴金属を身につけることもあるようです。正確なことはよく解りませんが、これらの身体を飾る行為は戦士としての勇敢さ、長老や祈とうしなどの身分の高さ、豊かさ等の象徴と同時に、タタリや天罰等を避ける魔除けの意味があったようです。 一方、熱帯地方の住民は、日中の強い日差しの熱や紫外線から皮膚をマモルために、植物のオイルや白粘土の粉などを露出しているハダに塗る知恵を自然に体得しているようです。

その2.クレオパトラとアイシャドー

 歴史に名をのこす美人ナンバーワンのクレオパトラは、顔のみならずからだ全体が均整のとれた美人であったのでしょう。美人の条件は、民族、文化、年齢、宗教、その他により、様々であります。日本人女性の「オカメ顔」を、ある時代の日本人は美人と言い、また別な時代の人達はブスと表現するかも知れません。

 顔かたち、プロポーション、スタイルでは、クレオパトラは世界一の美貌の持ち主でありました。時の権力者シーザーは、クレオパトラの美貌に驚き、ヒトメボレで恋におちたようです。しかし、クレオパトラにすれば、シーザーを恋のトリコニする必要があったので、秘策を練って会いに行ったようです。

 古代エジプトの人達やクレオパトラが登場する映画や絵画を観ますと、クレオパトラ自身もマブタの上にキレイな青いアイシャドーを濃く入れています。このアイシャドーの意味は上に書いたような魔除けであったのでしょうか。

 美人の要件や条件は、時代や人によって変わるかも知れませんが、しかし、輝く美しい目はいつの時代も美人の要件の一つであるようです。日本でもつい最近まで、トラコーマという目の病気にかかっている人が沢山いました。大昔は、もしかすると殆どの人がトラコーマにかかっていたかも知れません。

美貌の持ち主であったクレオパトラにも、一つだけ引け目を感じる弱点がありました。それは、トラコーマによる目の充血です。美人の要件は、輝くような美しい目をしていることですから、充血して眠そうなウルンだような目は他人に見られたくないはずです。シーザーに目だけは見つめられたくなかったので、目以外の場所に興味をソラス必要を考え、マブタにアイシャドーを濃く入れてカムフラージュをしたようです。この秘策が、大成功をおさめてシーザーを恋に陥れることができたのです。アイシャドーは、クレオパトラにとって化けるための秘策でありました。

その3.天然痘の後遺症

 エジプトで発見された数千年前のミーラにも、天然痘の跡があるそうです。またキリスト教の旧約聖書にも天然痘の患者の話が記載されています。これらのことからも天然痘は、相当昔から人間社会に存在していたことが判ります。

 天然痘は、昔から忌(い)み嫌われていた病気の代表でした。つい最近まで、天然痘で死亡する人が世界で毎年数百万人もいました。不幸にして天然痘になってしまうと、死亡するケースが多いのですが、幸いにして生き残る人もいました。天然痘の生き残りの人は、顔も含めて全身に天然痘のハレモノの跡が残りますから、他人から直ぐに天然痘にかかった人と見破られてしまいます。路上で見つけられると、石を投げられ、棒で死ぬほどタタカレて、町から追い出されたのでした。

 家族に天然痘の患者が出ると、人目につかぬよう、薄暗い奥の部屋に家族の一員である患者を一生涯幽閉(ゆうへい)しました。しかし、時には不幸にしてそれでも他人に見つかってしまう事があったようです。町のオキテとして、天然痘の患者は生きていても、死にそうであっても、山奥に捨てられることになっていました。幸いに生き残ると、悲劇が起こりました。山奥に捨てられても、家族が恋しくなり、会いたくて、山から町に降りて来ました。しかし、直ぐに見つけられて、山に追い返されたのです。

 天然痘の生き残りの人達は、天然痘であったことを見破られない方法を考えました。その結果、顔にある天然痘のハレモノの跡を隠せば良いことに気がつきました。そこで生まれたのが、白壁の漆喰(しっくい)のような物で、現在の練りオシロイでありました。オシロイは天然痘の跡を隠すための手段であり、化けるための道具でありました。

その4.オシロイの害

 オシロイの白は、鉛(なまり)という金属によります。江戸時代から、特殊な職業の女性は、顔に漆喰を塗るようにオシロイをコテで塗りタグリ、真っ白にしていました。明治以降は、普通の女性も好んでオシロイを使うようになりました。お化粧は、女性をより美しくする良い手段です。

 しかし、金属は、大なり小なり身体に毒です。ナトリウムの毒性を仮に1とすると、鉛の毒性は1000、水銀は100万程度であるようです。鉛を含むオシロイを長年使い続けると、皮膚が鉛におかされ、病気になってしまいます。現在のオシロイは、鉛を含まなくなり安全ですが、一昔までは、お化粧することは美しさのために命を交換する程危険なことでありました。

 いずれにしても、お化粧は化ける手段で、本来は病気との関係から生まれたようです。現代女性が好んで用いているお化粧は、本人が化ける手段ではなく、他人に心地(ここち)よさを与える愛の情報提供のようです。

▲▲ ▼▼


Copyright (C) 2011-2024 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.