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89.シャンプーで細菌が変異する?.  4-12-98.

その1.シャンプーが細菌で汚れている.

 公共の場に備えられている手洗い洗浄液や理・美容院で使われているシャンプーやリンスは、オビタダシイ数の細菌によって汚染されていることを、既に曖昧模糊の「5.手洗い洗浄液で手に細菌が付く?、 6.シャンプーの細菌汚染」に書きました。

 その後に判明したことを改めて書き記します。なぜ改めて記載するのかには、いくつかの理由があります。例えば、手洗い洗浄液やシャンプーの類は、不特定多数の人が使用しますから、使用者のなかには体が弱く抵抗力の低い人、特にお年寄りや子供なども含まれます。健康な人には単に雑菌と思われるかも知れませんが、抵抗力の弱い人には無害な細菌と簡単には片づけられないと考えられます。

 また更に、市販のシャンプーは、細菌の性質を変化させるらしいことが、私たちの最近の研究で判明しました。環境ホルモンと関係があるのかないのかは、まだ判りません。しかし、シャンプーには界面活性剤が入っていことだけは間違い無い事実です。

その2.シャンプーで細菌は長生きする.

 私が不思議に思うことがあります。それは、理髪店より貰い受けてきたシャンプーの一部は、既に5年間も研究室に放置してあります。それでも、その中に存在する細菌の種類と数は、この5年の間殆ど変化してないのです。また細菌で汚染されているシャンプーを入れてあったプラスチックの容器は、流水で何回洗っても、たまアルコールで数分消毒しても、細菌は死滅しないのです。更に、新しいシャンプーでは細菌を加えてもすぐには増殖しませんが、一旦増え出すとそのシャンプーでは細菌を死滅させることは大変難しくなること等です。

 そこで、一旦増え出した細菌は、どうしてシャンプーの中で長生きできるのかを不思議に思いましたので、少し試験をすることにしました。

その3.どうして細菌はシャンプーの中で生きながらえるのか.

 シャンプーの汚染菌として良くみつかる菌に緑膿菌という名前の細菌があります。この細菌は、通常は台所やお風呂などの水周りからも分離される自然環境には珍しくない細菌の1種類です。多くの細菌は、寒天の表面で増殖すると普通は丸みを持ったスムースな集落として増殖します。緑膿菌も丸い集落(S型という)を作りますが、時にはヒダがありギザギザのラフな集落(R型という)を作ることもあります。

 ところが、シャンプーから分離される緑濃菌の大部分は、丸い集落(S型)は作らずギザギザの集落(R型)を作ることに気がつきました。シャンプーと接触するとS型の菌がR型の菌に変化するのではないかと考えました。そこで、シャンプーでS型の緑膿菌がR型の菌へと性質が変化することを証明する試験を開始しました。結果は、見事に仮説が証明され、細菌の性質が突然と変化するのです。

 このような思考過程を専門的には、「作業仮説をたてる」と言います。科学分野での作業仮説については、刑事コロンボの話として後日説明します。

その4.シャンプーは細菌の性質を変化させる.

 国内で売られている代表的なシャンプー10種類について、S型の緑膿菌に対する影響を調べました。調べ方は大変に簡単な方法を用いました。調べるシャンプーを適当に希釈して、その希釈液に百万個程度のS型の緑膿菌を加えて、数日室内に放置して接触させ、そのシャンプーと混合した菌液の一部を寒天の表面に塗り、フランキで一晩培養します。なにも変化しなければ、表面がスムースなS型の緑膿菌の集落のみが生えてくるはずです。

 調べた10種類のうち8種類のシャンプーで、S型の集落以外にR型の緑膿菌が生えてきました。あるシャンプーでは、百倍に希釈しても細菌の性質を変化させました。一旦R型に変化した緑膿菌は、シャンプーの中でよく増殖しました。

 シャンプーのどの成分が細菌に対して変化を誘導するのかを知りたいのですが、シャンプーのボトルにはあまり詳しい内容成分は記載されていません。製造会社に聞いてみたこともありますが、「企業秘密です」と教えて貰えませんでした。

 科学としては、これだけの試験結果では、たいした意味を持ちません。しかし、細菌に対して性質を変化させる成分は、人の細胞に対して全く無害なのでしょうか。不特定多数の人達のなかには、化学物質に対して大変に過敏な人も居るはずです。

その5.環境ホルモンと無関係か. 

 シャンプーには、頭の皮膚や毛髪に付着したヨゴレを取り除くために、アブラやタンパクを溶かしとる成分が配合されています。ヨゴレを落としたり、毛髪をシナヤカニにさせるために、界面活性剤が加えられています。更に、雑菌による汚染を防ぐために殺菌作用をもつ化学物質が添加されています。

 環境ホルモンという、恐ろしい化学物質が世界をオオッテしまったようですが、その物質群には界面活性剤もリストされているようです。シャンプーそのものや添加されている界面活性剤は、毛髪には無害なのかも知れません。また、頭皮の細胞に対する安全試験は実施してあり、市販のシャンプーはすべてこの試験に合格しているのでありましょう。しかし、環境ホルモンと呼ばれている化学物質群は、通常の安全試験で危険が無いと思われている薄い濃度で、生殖異常などを引き起こすことが、その恐ろしさの特徴と思います。

 シャンプーに環境ホルモンが含まれているとは、決して申しあげる積もりはありませんが、ボディーシャンプーと称するシャンプーを全身に塗りタグッテいる若者達の現状を聞いていると、果たして安全なのかしらと考えることがあります。

 セッケンは純粋な天然物質ですが、多くの洗剤は化学物質です。食器を洗うにも、体や頭を洗うにも、セッケンで済ませることができるはずです。もしかしたら、我々に一人でも直に実行できることの一つは、界面活性剤を含む商品の使用を控えることかも知れません。

 私のこの文を化粧品協会の方が読まれたら、どんな反応を示すのでしょうか。私には大変に興味があります。と言うのは、曖昧模糊の「6.シャンプーの細菌汚染」に記載してありますが、化粧品協会は「監督官庁の指導を仰いでいるので安全だ」と公言しているからです。それほど威張れるのてしょうか。

 ここに紹介した試験内容は、「北里医学」という学術雑誌に掲載されています。

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