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110. 薬は毒の逆. 9-5-98.

その1.毒と薬は表裏一体といいますが

 いかに優秀な薬も使い方によっては、毒としての副作用があります。副作用のほとんどない理想的な薬としサリドマイドが有名ですが、しかし、妊婦が使うと例外的に奇形児を生む薬害が問題になりました。現在国内では市販されていません。

 どのような薬も毒になりうるのですが、毒が薬になるという珍しい話を紹介します。神経を犯すボツリヌス菌の毒素と下痢を起こすコレラ菌の毒素の作用についてです。

 

その2.多汗症にボツリヌス毒素が効果

 私は知りませんでしたが、世の中には汗がですぎて困っている人がいるようです。専門家はこれを「多汗症」というそうです。腋の下の多汗症に悩まされている患者に朗報という記事を、ある医学専門誌に見つけました。

 汗が多くでる部位は、主に手足と腋の下の2か所だそうです。腋の下の多汗症の場合は、塩化アルミニウム溶液で汗腺管を閉鎖するか、または汗腺が密集している部位を外科的に除去するより方法がないそうです。

 ドイツのある大学病院の皮膚科の先生は、発汗が顕著で塩化アルミニウムが効かなかった12名の患者を選び、患者の腋の下の8か所にボツリヌス毒素を注射しました。発汗量は、腋の下に60秒間当てたろ紙の重さを測って求めました。治療前は、1分間に200から800ミリグラムもの汗が計測されたそうです。治療後は、全例1週間以内に効果が現れ、腋の下の発汗量は1分間に50ミリグラム以下にまで低下したそうです。

 皮膚科でのボツリヌス毒素の使用は認可されていませんので、この治療はあくまでも担当医師が責任を負うべき試験的治療であります。この治療法の効果が持続するのか、どの程度の毒素を使うべきか、副作用はないのかなど、これからの試験に期待されているようです。

 

その3.コレラ菌毒素が育毛作用

 世の中には薄毛に悩んでいる人は、大変に多いと聞きます。人間に使用した成績ではなく、私達が黒い色のネズミを使った実験動物での話です。薄毛のネズミはありませんので、健康なネズミを仕方なく使いました。背中の毛を脱毛剤で取り除き、そこにコレラ菌の毒素液を塗ります。

 脱毛した皮膚は、最初は赤味を帯びていますが、数日すると少し黒っぽく見え出し、更に1週間程度経過するとウブゲが出てきます。毛髪の専門家は、毛髪の発育を何か特別な方法を用いて計測するのかも知れませんが、毛髪に素人の私達は次のように行いました。毛の発育は、皮膚の色を特殊な計測器で計り、皮膚の色の変化を機械で測定し、生えてきた毛の長さ、太さや形状は顕微鏡で観察しました。

 コレラ菌の毒素液を塗布したネズミの皮膚は、毒素の副作用でしょう、最初の数日は少し腫れ上がりました。しかし、結果は、確実に毛の生えだすのが速く、太い毛が多く生えました。いろいろな都合から、実験は継続できず、この程度で終わってしまいました。

 皮膚を腫れ上がらせる毒素の毒作用を弱める努力と使用法を検討すれば、意外に効果のある育毛剤がうまれるかも知れません。

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