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114.ダマシ上手は商売上手? 10-25-98.  

その1.抗菌製品の性能試験.

 性能試験の結果の解釈と宣伝用広告文の読み方に関するある経営者の考え方について、偶然に知り得えたことを考えてみたいと思います。全ての経営者が皆な同じ考えであるはずも有りませんし、また悪い人でもありません。ここに紹介する経営者は、例外的な人物かも知れません、しかし、現実に存在することも確かです。

 自社開発の新製品の性能を証明して貰うために仮に私の研究室に性能試験を依頼しにきたとします。その時「このような条件」でと自社製品に都合の良い結果が得られそうな試験条件を指示してきました。このような試験条件は、実際の使用条件と全くかけ離れていて、何の因果関係も有りませんから、このような内容の試験はお引き受けできませんと断りました。すると、不承不承私の考えに従いました。結果として得られた性能は、3回独立して行った試験の結果として、1回目の結果はそれなりの(あまり悪くない)成績、あとの2回では性能は全く証明されない結果が得られ、そのことを明記して報告しました。

  「XX大学の試験で証明、革新的な商品の誕生」と通信販売を使って派手に宣伝をしたらしいのです。この広告のお陰でその新商品は飛ぶように売れたらしい。そうこうするうちに、私のところに苦情や相談が消費者から受けるようになった。それで派手な広告に私の名前と奇妙な成績が記載されているらしいことを初めて知った。宣伝文を入手して、良く読んでみると、私が渡した性能試験の成績が改ざんされていることが判りました。渡した成績報告書に記載されている最初の一部を残し、それに続く都合の悪い部分を切り取ってありました。切り張りしてあったのです。これは、報告書の一部で正しい表現でなく、成績の改ざんだと抗議をしました。

 改ざんなどしていません、正しい成績と間違っている成績があったので、正しい成績を使っただけ、一回と言えども得られた成績は成績で嘘で無い、間違っている悪い成績を公表するバカがどこにいる、と言うのです。正しい成績と間違っている成績とどのように区別がつくのでしょうか。その経営者にすると、正しい成績とは、宣伝に都合が良いという意味なのです。

 このように、自分にのみ都合の良いように報告書の成績を改ざんされては、私も消費者も大変に迷惑です。消費者は、効きもしない製品を効くかのように誤解します。購入することは、誤解とは限らない……。一方的な解釈を捲くし立てていました。

私どもで発行する性能試験に関する成績報告書には、「第三者に公表するときは、または成績を転載するときは、私どもの許可を得てください、また成績の一部だけの公表は控えて下さい」と明記しています。コピー機が有ると切り張りした文書も正式文書も区別がつかなくなってしまいます。

 

その2.ある読者からのお便り.

 通信販売の商品企画を担当している方からの手紙の一部を紹介します。これもまた現実の話です。

 「抗菌剤を使用」と記載された生地製品と練り製品をカタログに掲載する段階での社内審査の結果から、「公的機関またはそれに準じる認定機関からの抗菌効果検査報告書」の提出を相手の大手メーカー会社に求めた。すると「抗菌剤使用としか書いていないし、抗菌の効果なんて実際お客さんは使っていても解るわけがない、お客さんには抗菌の効果があると思って貰い安心を与えるだけで、何の損失や被害を与えるわけではない」と一蹴され、呆然としてしまいました。 

 大手メーカーというのは「わが社が作っている」という会社名の信用で商売をされているところが多く、「信用なくて何が商売」という建前のもと、安全性については目をつむっていることが多いです。「大手さんが他にも抗菌で売っているのに、どうしておたくだけデータとか言われるんですか?たくさん販売されているのが、効果がある何よりの証拠でしょう」と言われるのです。データの裏付けもなく、「安心感を与えるから」というので「抗菌剤使用」ということで、暗に抗菌の効果を謳うのは、消費者をバカにした発言の何ものでもないと私は思います。

 特に練り加工製品は、効果がない商品に出会ったことも実際あります。メーカーとケンカしてまで、検査に出したところ、「抗菌効果なし」との検査機関のデータが帰ってきました。効果がないと解っていて販売するのは、詐欺行為にあたるのではないかと思います。公的に基準や検査が定められないのは非常に残念に思います。そして、「何かあった時のためにPL保険に入っているのではないですか」と言われると、何という商売をしているのだろう、そしてそのような認識をもった取引先がうちにあることが、情けなくて仕方ありません。

 私は、「消費者に安心と確かな商品をお届けする」をモットーに、仕事に励んでおります。ですが、理想戦士になる部分があり、負けそうになることがあります。先生のホームページに出会って、弱気になりかけている自分に戦う勇気を頂きました。がんばります。

 

その3.抗菌製品の宣伝文の読み方.

 上に紹介した二つの例は、例外的な存在なのでしょうか。詳しいことは解りませんが、宣伝文はかなり割引しないと残念ながら判断が間違ってしまうのかも知れません。「抗菌剤(材でなく剤)」とか「XXウイルスに対して効果がある」という表現を宣伝に使うと、監督官庁の指導をうけることがあるのだそうです。

 監督官庁の指導があるから控えめな表現にすることもあるのでしょうが、「抗菌剤使用」とか「抗菌処理済」という表現は、「抗菌効果がある」という意味ではないこと、または「抗菌効果は試験してないので解らない」という意味の表示なのかも知れません。広告の宣伝文で「抗菌効果がある」と明記してない場合は、信用するなと消費者に訴えているのでしょうか。 

 「お客さんには抗菌の効果があると思って貰い安心を与えるだけで、何の損失を与えているわけではない」から悪くないと言うことが許されるのであれば、「豚肉を牛肉」と称して販売しても健康を害する訳でもないということに繋がります。本当に許される商行為なのでしょうか。

新聞広告を見てよく思うことなのですが、新聞社には「広告文に記載された内容や表現について審査・検討する担当部署」は存在しないのでしょうか。それとも、審査して「宜しい」という決済を得て、印刷しているのでしょうか。大手の新聞社には科学部があり、そこには優秀な科学記者がいます。科学部は宣伝には無関係な存在なのでしょうか。新聞に載った内容には、責任はないのでしょうか。マスコミ関係者からの意見を私はお聞きしたい気持ちです。皆さんはどのように感じているのでしょう。

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