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118.卵による食中毒. 12-25-98

  1. サルモネラ菌による感染症.
  2.  サルモネラ菌は、ヒトや動物の腸管内に生息し、食物や水を介して、またヒトからヒトに感染する代表的な細菌群です。本菌による感染症は、昔は腸チフスが有名でしたが、近頃は食中毒が最も多いのです。特に近年は、サルモネラ食中毒の中で卵および卵加工品によるサルモネラ・エンテリティディスSalmonella enteritidisに原因する食中毒が急増しています。

     平成8年社会的問題を起こした腸管出血性大腸菌O157の食中毒では、全国で一万人近い患者がみられました。これに対してサルモネラ菌による食中毒では、一万六千人を超す患者がでました。

     サルモネラ食中毒は、学校、旅館や飲食店などで集団発生する場合と、家庭などで散発的に発生する場合とがあります。平成元年になり、食中毒事件が突如多発し、平成4年には腸炎ビブリオと黄色ブドウ球菌を抜いてサルモネラ食中毒が発生件数と患者数ともに1位になりました。平成8年には350件のサルモネラ食中毒が届けられ、全食中毒の33.5%を占め、患者数は食中毒の総患者数43,935名の42.2%を占めるようになりました。

     どの程度の菌数をとると感染して発症するのでしょうか。サルモネラ菌の発症に要する菌数は、感染実験や食中毒の調査結果から、成人では100個(CFU)程度と推測されています。しかし、個人差が相当に大きく10個(CFU)から1,000個(CFU)と大きな差が見られます。特にチーズやチョコレートなどによる事例では、発症菌数が少ないことも認められ、食品中の脂質が胃酸から菌を保護する作用を示す可能性がありそうです。

     

  3. タマゴとサルモネラ.

 1985年以降、世界各国で鶏卵によるサルモネラ食中毒が多発し始めました。わが国では、欧米諸国に約3年遅れ平成元年にサルモネラ食中毒が多発し、例年の発生件数の二倍近くにまで増加しました。これらの原因食品の多くは、タマコとタマゴ料理でした。

 

表 タマゴとタマゴ料理による
  サルモネラ・エンテリティデイス食中毒

    原因食品      患者数
    洋菓子       2,199人
    卵入り丼      1,409人
    焼き物・揚げ物   1,211人
    アイスクリーム     769人
    マヨネーズ       758人
    ソバ(具)       603人
    卵焼き         545人
    卵納豆         367人

 鶏卵がサルモネラ菌に汚染される経路には、産卵時にすでにタマゴ内に本菌が認められる場合と、表面に糞便とともに付着した本菌が卵殻を通過して卵内に侵入する場合とがあるようです。

 本菌感染ニワトリであっても生むタマゴ全てに本菌が移行するのではなさそうです。2%程度のタマゴからのみ本菌が検出され、タマゴ内の菌数も20個(CFU)/卵未満と少ないようです。ニワトリの種は、米国や英国から輸入されており、汚染防止には輸入時に本菌によるニワトリの汚染状態をチェツクすることが重要であるようです。

卵殻通過による汚染には、タマゴの表面に糞便といっしょに付着した本菌が卵殻を通して卵内に侵入するようです。また卵殻を水洗いすると菌は卵内により入りやすくなるようです。カルシュウムの多い飼料を与えたタマゴは、殻が厚く比重が高く、卵内への本菌の侵入性は低くなると言われています。タマゴを保管する場合、空気の入っている頭(気室)の方を上にして保管すると本菌は増殖し易く卵内への移行も早いそうです。黄身の位置との関係があるようです。

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