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235. 唾液とインターフェロン. 3-15-2001.

1.唾液の働き.

普通の人は、唾液のことには常日頃あまり意識していませんが、誰でも体験して知っていることが一つあります。唾液の出方には、普通に何もしてなくても分泌される唾液と例えばスッパイ物を見たり、または口に入れると出てくる唾液との二種類があることです。スッパイ物を口に入れると唾液腺が刺激されて唾液の分泌が促進されます。

少し前のことですけれども、ある日突然と唾液の出が悪くなったお年よりの方がいました。たかが唾液ですけれども唾液が普通に出ないと日常生活で困ることが多いようです。一番困るのは食事のようです。朝食にはトーストしたパンと紅茶を摂っていたのですが、パンのように乾燥したものは、いくら噛んでも喉を通らない。それで紅茶に浸けてグチャグチャにして流し込むようにして食べる事を考え出したようです。次に口の内が乾くので、入れ歯が痛くなる、唇が乾く、舌が円滑に動かなくなるので会話が面倒になる等数えきらないほどの苦痛が伴うようです。

少し調べてみると、唾液の働きはじつに多様であることが判りました。最も重要な機能は口腔内の健康と衛生を保つことですが、その他の代表的な働きを列挙してみます。

1). 咀嚼や嚥下との関係。物を浸潤させ、粉砕を助け嚥下を円滑・容易にする。

2). 味覚との関係。物を溶かしだし、舌で味覚を感じさせる。

3). 発音との関係。話中に舌、アゴやノドの運動を円滑にして、発音や発生を容易にする。

4). 消化との関係。強力なアミラーゼを含みデンプンやグリコーゲンを分解する。

5). 清潔さとの関係。ゾチーム、ラクトフェリン、分泌型の免疫抗体等が殺菌作用または抗菌作用を示し、口腔内を清潔に保つ。

6). 干渉作用等との関係。物や飲み物の酸やアルカリを中和する、パロチンはカルシュウムなどとの関係から老化防止などに関与する。

抵抗力の弱い赤ちゃんは、粘液性のヨダレを常にダラダラと垂れ流しにしています。この赤ちゃんのヨダレは、出なくては命を保つことがむずかしくなります。大量に流れ出るヨダレでホコリを始めとする有害物質を流しさり、粘液はインフルエンザウイルス等を包み込みノドの細胞に感染するのを防ぎ、さらに唾液中には母親から貰い受けたハシカウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、その他多数のウイルスや細菌に対する分泌型の免疫抗体を含んでいます。

2.インターフェロンが唾液の産生を促進

まだ論文として発表はされていませんが、友人から聞いた米国のある企業が実施した興味ある臨床試験の結果について紹介します。ここで試験に取り上げられたのは、難しい自己免疫病の一種で「シェーグレン症候群」とあまり耳慣れない病気です。この病気の特徴は、口のなかや眼等が乾燥することです。これは、唾液、涙や体液の出が悪くなったためです。

低用量のインターフェロンを含ませたトローチを一日三回、連続で24週間与えたら、シェーグレン症候群患者の唾液の分泌量と口腔内乾燥が改善されたということです。具体的には、スッパイもので刺激しても刺激を加えなくても唾液の分泌が改善され、口腔内乾燥感も改善された。その他として、口腔内そう快感、乾燥した食べ物の嚥下能、食物一般の嚥下能、ノドの乾き感などが改善された。刺激しなくても自然に唾液が出ることは、唾液腺機能の改善の結果を意味し、口腔衛生および口腔そう快感を維持するうえできわめて重要であるようです。

米国内では、200万人のシェーグレン症候群患者がおり、ヨーロッパでも同程度の数の患者がいると推測されています。米国の数値をそのまま利用すると、日本国内にも100万人程度の患者さんが「口、眼や膣の乾燥」に悩まされていることでしよう。どうして有効なのかは別にしても、シェーグレン症候群患者さんには朗報になるかも知れません。

唾液を分泌する腺は、口の内には何種類もあります。インターフェロンがどの唾液腺の機能を改善しているのか、どうして唾液の分泌が良くなるのか、改善された分泌能は持続するのか等については、まだ判っていないようです。しかし、実際に患者を対象とする第V相臨床試験が完了したとのことですから、試験結果の公的機関の評価によっては、近い将来インターフェロンがシェーグレン症候群の治療薬として採用されることでしょう。

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