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240.ジェット水流式循環風呂とレジオネラ菌.4‐21‐2001.

お風呂に入ると体調が悪くなる.

24時間風呂のレジオネラ菌については、近頃あまり話題にならなくなったようです。問題がないから話題にならないのでしたら、結構なことと思います。ところで、浴槽につけた泡のでるジェット水流装置の水のとり入り口に女の子の髪の毛が吸い込まれ水死した事故の報道があったことを記憶されている方も多いかと思います。その後、細かい泡を勢いよく吹き出すジェット水流装置の水を吸い込む力が意外に強力なことが判り、安全性に問題があるとの警告がだされ、改善されることも報道されていました。

今回は、この細かい泡が勢いよく吹きでるジェット水流装置の細菌学的な安全性について少し考えてみたいと思います。ある方からレジオネラ菌についての質問のメールを貰いました。相談の概要を最初に記します。自宅の風呂は、温泉を使う24時間循環式である、時に肺炎のような病気になり体調が悪くなることがある、かかりつけのお医者さんに相談しても原因がよく解らない、そこで風呂水にレジオネラ菌がいるのではないかと思うので調べたいが、どこに頼めば良いのだろうか、というものでした。

風呂水を保健所に持参してレジオネラ菌の検査を依頼してはどうかと連絡をしました。直ぐ近くには保健所がないので、保健所に電話して聞いてみたら、「一月に一回程度しか試験を引き受けられない、一回の試験費用は一万八千円である」ことが判った。それで来月の試験日に風呂水を持参することにした、との返事の連絡が送られてきました。

私は、家庭にある温泉の24時間循環風呂のレジオネラ菌については調べたことがありませんでしたので、研究に協力して貰えるならばレジオネラ菌の試験をお引き受けしますがと申し出ました。なんでも協力するから調べて下さいとの事になりました。私共の相模原市からはそれほど遠方でもありませんので、お風呂を見せてもらいに出かけました。

ジェット水流式24時間循環温泉風呂.

一トンの水が入る大きな石造りの浴槽に温泉を引いてあり、外付けの高価な循環装置が付けられていました。温泉は、常時流しっぱなしでなく、足りなくなった分を補う循環式でした。外付けの24時間循環装置は、加熱部分、水を浄化する清浄濾過装置、オゾン発生装置と細かい泡を勢い良く出すためのジェット水流装置などからなり、電気は200ボルトで運転するものでした。

浴槽の位置関係を理解して貰います。横長な弁当箱みたいな箱を思い描いて下さい。その箱を上からのぞく形が目の前にあることを想像してください。浴槽は横長な形で窓際の長い側面の底面より少し高い位置の水中から泡を含むお湯が勢いよく吹き出し、泡は浴槽の反対側の側面より中間に近いところでお湯の表面に浮き上がってきます。浴槽の縁は、浴槽の外から測ると15〜20センチの高さがあり、内側は水面より10センチ位ありました。

サンプルの水をとる位置、取り方、配送の仕方などをお願いし、試験を開始しました。浴槽内のお湯、循環装置から直接出てくるお湯をはじめ調べた限り全てのサンプルから相当数のレジオネラ菌が検出されました。いろいろと試験を実施していた時、ちょうど良く偶然ですが販売会社の担当者が循環装置の洗浄をして行きました。しかし、洗浄直後からも相変わらず菌は検出されました。

オゾン発生装置と泡を吐き出す装置の電源を切り、持ちこんだ強力な活性酸素を放出する装置をお湯の出口に直結につなぎました。この特殊な装置を1時間運転すると、浴槽に出てくるお湯も浴槽のお湯からもレジオネラ菌は検出されなくすることができました。

結果的に判ったことは、循環湯の清浄装置内にレジオネラ菌が定着していること、常にレジオネラ菌を含むお湯が浴槽に流れ込んでいること、お湯の清浄装置は専門会社が洗浄した後でもレジオネラ菌が検出されること、設置されているオゾン発生装置は無効であることなどでありました。

更に意外なことが判りました。オゾン発生装置と泡を勢い良く吹き出す装置を稼動させながら、浴槽に満たされているお湯の表面を傘形に作ったビニーを使って水面近くの空気を吸い取ってレジオネラ菌の検出を試みました。結果は、湯気を含む空気から菌は採取できませんでした。お湯に相当数の菌が存在するのですが、お湯の表面の空気からは菌は回収されないのです。

ミストは危険?

次ぎに全ての装置の電源を入れ、ジェット水流による泡や目で見えないミズシブキなどによってレジオネラ菌が飛散していないかを調べました。浴槽の縁の上と浴槽の外側の床に細菌培養用の寒天培地の入ったシャーレを置き、10分間フタを開け放しました。泡やミズシブキを受けとめるのが目的です。その後、レジオネラ菌が飛散している可能性を証明するためにフラン器内で培養しました。ところが意外や意外なことが判りました。泡の流れる方向、すなわち上の図で言うと浴槽の窓際と反対側の下側の縁の上や同じ方向の床に置いたシャーレに多くのレジオネラ菌の集落が認められました。

バブルジェット式の泡および泡がハジケルと、お湯のなかに存在したレジオネラ菌が飛散することが確認されたのです。これは、大変なことを意味していると思います。人によっては浴槽内で首までお湯にツカル習慣がありましょう。そのような人は、水面近くの空気を吸い込む訳です。そのとき、泡がハジケてレジオネラ菌をも吸い込むことになりそうなのです。

 

ジェット水流装置が装置されているお風呂は、必ずしも珍しくないと思います。しかし、ジェット水流装置付き循環風呂は細菌学的には衛生的でないようです。私達は、ある一軒の家庭の温泉でこれを知り得たのですが、その他のジェット水流式循環風呂でも同じようにレジオネラ菌が飛散しているのかはまだ判りません。しかし、全て似たような結果になるのではないかと私は想像します。お風呂を安全に楽しむには、ジェット水流装置の電源も切り、口や鼻を水面から少し離した方がよろしいかも知れません。でもジェット水流装置の電源を切ることは、装置をつけた意味が無くなります。さてどちらを優先させるべきなのでしょうか。

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