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296. 食塩を分解する細菌はいますか.9-10-2002.

万能はありえない.

家庭から出される生ゴミなどは、一般廃棄物とよび、市町村などの自治体が処理しています。これに対して企業などでの生産活動に伴って排出される廃棄物は、産業廃棄物といわれ、排出する企業の責任で処理することになっています。一般廃棄物の処理についても自治体は、埋立地の確保難や焼却するとダイオキシンなどの新たな二次産物や焼却灰の処理などに悩まされているようです。企業によっては、処理しにくい廃棄物が大量にでて環境的にも経済的にも問題となっているようです。

食品関連企業からの廃棄物は、動物の骨や皮はべつにして、人間に食べられる物の一部ですから、微生物にも食べられるように一見思われます。しかし、現実には微生物が食べられない物は、意外に多く存在します。

廃棄物を大量に出す企業、廃棄物の処理機を製造または販売している企業、廃棄物の処理業者ならびに環境に関するNPO法人などの方々から、廃棄物を処理する微生物についてのメールを貰います。そのなかには深刻な問題を抱えている方からの質問もありますが、逆に極めて自分勝手で不快に感じるメールもあります。

処理機を販売している企業は、売った商品が宣伝通りに効率的に稼動しているときはよいのですが、廃棄物がうまく処理できないとき、または効能書きとは違って悪臭や異臭が発生するときは大変なようです。問題の発生する場合、処理機の構造と機能(主に用いている微生物の性能)に原因がある製造者側に原因がある問題と、使い方に主な原因のある使用者側に原因がある場合とがあるようです。

原因がなんであれ、無数に存在するかに思える微生物にも人間と同じように好き嫌いがあります。パンも麺類もご飯も好きな人、緑茶も紅茶もコーヒーも好きな人、また洋食も和食も大好きな人もいます。しかし、緑茶とコーヒーを一度に注文する人はいないはずですし、パンとご飯を一度に出されても同時に両方を食べる人もいないはずです。ご飯を先に食べた後にケーキを食べることは、一般にありえます。これと同じく、糖分、タンパク、脂肪を食う微生物がいたとして、これらを一度に与えても微生物によって食べる順序が決まっています。糖分から最初に食べだすのが普通です。しかし、糖分が極端に多すぎると、微生物は弱ってしまいます。

自然に学ぶ大切さ.

食べ物を放置した場合、一般論として、カビが生えやすい食べ物、腐りやすい食べ物、カビも生えず腐りもしない食べ物に分かられると思います。食パン、ミカンや味噌などは、カビは生えますがわりと腐りにくい物です。ひき肉、スープや煮物などは、大変に腐りやすい物です。生ハム、鰊の酢漬けや甘納豆などは、腐りにくい物の代表です。

米や麦など、コンニャクやカンテンなど、ほうれん草や人参など、昆布や蟹などの天然物は、微生物に抵抗性であるから、微生物に食われることもなく病害にあうこともなく成長し育つのです。天然物が備えている自然の抵抗性は、微生物が食うことのできない成分で構築されているからと思われます。生デンプン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、油などが、天然の防腐剤にあたります。

牛肉や豚肉、鰊や鮭、小豆や落花生などの煮物は、大変に腐りやすいのです。別な表現をすると、細菌の格好の栄養素になるのです。これは、適量の調味料で煮た場合に限ります。生ハム、鰊の酢漬けや甘納豆などが腐りにくいのは、ある程度以上の濃度の食塩、食酢や砂糖などを細菌の増殖を抑制する防腐剤として添加してあるからです。

食塩、食酢、砂糖、油、胡椒、生姜、ニンニク、ワサビなどの調味料や香辛料を使うことは、生ものを細菌の増殖から守り長持ちさせる目的で昔から使われています。調味料や香辛料であり防腐剤でもある天然の摂理なのでしょう。

業務用の廃棄物処理機を販売したが、塩や酢を含む廃棄物が多いため生ゴミが処理できなくて困っている。塩や酢を分解する細菌をなんとか入手したいが、どうしたら良いのかを教えてください、または似たよう内容のメールを結構多く貰います。私からの返事は、ほぼ上に書いた内容となります。高濃度の食塩や酢に耐えられる細菌は、絶対に存在しないことはないでしょうが、死海や塩田、食酢製造工場などに生息する極めて珍しい細菌となってしまうでしょう。しかし、それらの菌株は、生ゴミを処理する能力があるかは別な話になります。

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