312. 検疫なしの輸入ペット.1-29-2003. 検疫システムについて. ある身近にいる先生から「日本の動物輸入に関する私にとっては驚くほどずさんな検疫状況を知るテレビ放送を録画しました。先生の曖昧模糊で取り上げていただけたらと思い、ビデオ閲覧サイトをお知らせします。」とのメールを頂きました。早速に番組のサイトを開いて映像を見ました。 そのテレビの番組は、「テレビ東京が平成15年1月27日の月曜日、午後9時から放映したもので、番組のタイトルは「ジカダンパン−大特集 かわいい輸入ペットが人間にうつす死の奇病 ペット店潜入で驚きの(秘)実態曝露−」というものでした。 話は少し横道にそれますが、検疫について最初に話題にさせて貰います。私が知っている検疫とは、大昔イタリアから始まったシステムで、外国から来る船を港の外に40日間留めおき、その間何もなければ船の接岸と同時に乗組員の上陸を許す制度で、イタリア語での40が検疫と言う言葉になりました。国外から持ち込まれるモノに随伴して病害の原因となる微生物、虫や動物の搬入を水際で食い止め、市民と環境を守るために検疫は絶対に必要とどこの国でも考えられています。 そのため外国に開かれている空港や港湾で行う検疫には、人間を対象とする検疫、動物を対象とする動物検疫と植物を対象にする植物検疫があります。かつてタイのチェンマイ大学と学術交流のために日本とタイ国を往復していた時、時には研究材料としてタイ産果実の粉末を国内に持ち込む機会がありました。そのとき、日本の空港で誤解されると大変なのでと、チェンマイ大学の先生はタイ国の植物検疫所から内容証明の公文書を取り寄せ、私に物と一緒に書類を手渡してくれました。この証明書があると成田空港での植物検疫は、いとも簡単に済ますことが出来ました。 大分前になりますが、米国の研究者から生きている特殊な細胞の分与をうけ、航空便で送って貰ったことがあります。当時の羽田空港の検疫所から呼び出しの連絡をうけ、内容の説明に出かけた経験があります。これは無菌的な生きている細胞ですと説明しても、当時は生きた細胞の輸入は前例がないとの理由から、検疫と税関を通して貰うのに大変に苦労した経験があります。 何ゆえに私的な経験談を披露したのかと疑問に思われるかもしれません。国外から持ち込まれるモノについての検疫は、かなり時間を掛けて慎重に行われていると私は自分の経験から信じ込んでいるからです。 ペットからの感染. これまでに「曖昧模糊」では、ペットまたは野生動物との接触によっては、動物から微生物による病気を貰う可能性について何度か触れてきました。例えば、思いつくままに拾い上げると、『103.寄生虫病が流行だした、177.は虫類のペットと手洗い、139.マレーシアの新しい脳炎、220.猫ひっかき病、270.ペットからのカビ感染例、291.シカ肉からO157感染』などが出てきます。 「103.寄生虫病が流行だした」では、俗に言うゲテモノを食することにより罹る病気の話ですから、ペットと呼ばれない動物やモノが含まれます。しかし、トリ、カメ、フェレット、ブタ、シカやネコからも罹る病気のあることを紹介し、動物との接触には衛生的なことも含め注意しましょうと書きました。 テレビ東京のかわいい輸入ペットが人間にうつす死の奇病から私が理解したことは、書きとめてないので正確な数値は失念しましたが、驚いたことに日本という国には、検疫の定義に記載されていない動物(検疫を受けなくてはならないと定義されている動物のリストに記載されていないと、検疫を受けなくても良いと解釈できるらしいのです)が数億個体も輸入され、その数と種類のあまりの多さに検疫が追いつかないようです。そのため数億個体、べつな表現をすると国外から陸揚げされる99.9%の動物が検疫を受けないで、動物商やペットショップを介して家庭に引き取られているのが現状らしいのです。 ところが更に驚いたことは、ペットと呼ばれる動物の多くは、飼いならされたまたは訓練された動物でなく、野生の動物であるらしいのです。韓国型出血熱と以前には呼ばれていた恐ろしいウイルス性の熱病は、野生のネズミから人間が感染します。これなどはほんの一例でしかすぎません。「アウトブレーク」の話は野生のサルからの感染の話で、「ホットゾーン」は密林に潜むウイルスによる劇症の話です。これらは必ずしも空想物語ではないのです。極めて現実性の高いストーリーなのです。現代病のエイズももとを辿ると密林のサル集団から人社会に入り込んできた可能性も真剣に考えられています。 野生の魚、ヘビ、カメ、稀少動物などが自由に輸入できることがそもそもオカシく、それに更に輪をかけて検疫をフリーパスして家庭に届き、それをペットと称して飼う(買う)人がいる現在の綜合システムをなんと考えれば宜しいのでしょうか。この国はどこかが狂っているとしか思えない気がします。みなさんは検疫を受けてない野生の動物をペットと呼びますか。ペットとは、生涯を共にする伴侶動物と獣医学では定義していると聞きました。 厚生労働省では、「学識経験者の先生方にお願いして現在検討中」とのコメントを番組のなかで発表していました。ある雑誌の記事に、「国の諮問委員会から10数年ぶりに委員の委嘱があり、会合に出席したら10数年前に委員を勤めていた顔ぶれであるのに驚いた」というものがありました。日本人の寿命が長くなったことの影響でしょうが、お年よりだけで若い人のいない委員会もどうかと思います。「転ばぬ先の杖」という諺があるように、事故が起こる前に手立てを考えることは出来ないのでしょうか。更に検討を開始しても数年先にならないと、検討結果は現実のものとならないのもマドロッコシク感じられます。ペットと呼ばれている野生動物との接触は、微生物学と衛生学の視点からみて危険です。触らぬ神にたたりなし。 |