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322. 公衆浴場のレジオネラ菌対策. 7-23-2003.
 
公衆浴場のレジオネラ菌対策の責任の所在。
好きなときに何時でも風呂に入れ、保温用の電気料金も思ったより安く、浴槽水は頻繁に交換しなくて済むなどの特徴から、家庭用循環風呂が普及した。ところが外観的にはキレイに見える浴槽水がレジオネラ菌に高率に汚染されていることが判り、家庭用の循環風呂の売れ行きは昔ほどではなくなった。
 
ところがこの循環式風呂は、家庭以外のいろいろな施設でも便利性と経済性から広く取り入れられています。温泉100パーセントと謳われていても浴槽水が循環式で再利用されている風呂なのか、浴槽に直接注入される温水の風呂なのかは、普通の利用者には判りにくいものです。しかし、介護施設や娯楽施設の風呂を利用した人達のなかに、レジオネラ菌の感染を受ける人が多く、場合によっては死者がでる事故も多発しています。
 
規模の大小や殺菌装置の有無とは無関係に循環式の風呂は、レジオネラ菌に高率且つ高濃度に汚染されていて、場合によっては感染死する危険性の存在があるていど判明している現在、そのような安全でない装置を製造販売すること並びにそのような危険性が危惧される装置を使うことは、生命にかかわる事故などの場合には刑事責任を問われる可能性が充分に予測されます。
 
平成15年2月に厚生労働省健康局長から各都道府県知事、政令市市長および特別区区長に対して「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」(健発第0214004)という通達が出されました。
 
その目的は、責任体制の明確化であると考えられます。「近年、公衆浴場を発生源とするレジオネラ症の集団感染事例が度々起きており、かつ、これら管理要領等の記載ぶりが分りにくいとの指摘もあることから、レジオネラ症発生防止対策の要点を追加するとともに、「公衆浴場法第3条第2項並びに旅館業法第4条第2項及び同法施行令第1条に基づく条例等にレジオネラ症発生防止対策を追加する際の指針について」(平成14年10月29日健発第1029004号同局長通知)との整合性を図りつつ、レジオネラ症発生防止対策について営業者に対する指導の具体的内容を盛り込む等の改正を、別添1ないし別添3のとおり行ったので、衛生管理の指導に当たっての指針として活用されたい。」というものです。
 
この通知により、公衆浴場などでのレジオネラ菌対策の責任は、国から知事、市長や区長に移されました。もう国では責任を負いかねますということです。ところが知事が具体的に直接指示し責任を負う体制はできないわけですから、知事から行政組織の先端(または末端)の保健所に責任が委譲されてしまいました。
 
保健所はどうしたらよいのか。
「別添1 公衆浴場における水質基準等に関する指針」には、「1 水質基準」 に『カ、レジオネラ属菌は、検出されないこと(10cfu/100mL未満)。』と「2 検査方法」に『 イ、レジオネラ属菌の検査方法は、冷却遠心濃縮法又はろ過濃縮法のいずれかによること。また、その具体的手順は、「新版レジオネラ症防止指針」の「<付録>1環境水のレジオネラ属菌検査方法」を参照すること』と記載されています。また「別添2 公衆浴場における衛生等管理要領(レジオネラ症事故防止関連事項の抜粋)」には、ことこまかに「留意すべき事項」などが記載知れています。
 
ここに問題があります。「2 検査方法」にイ、レジオネラ属菌の検査方法は、冷却遠心濃縮法又はろ過濃縮法のいずれかによること。・・・』と検査法が指定されていることです。熟練者が検査する場合はあまり問題とはならないと思われるこれらの検査法は、未熟な者が実施すると存在しているレジオネラ菌も見落としてしまう可能性が大いに考えられます。もう少し結果の精度が高くなる方法も指定されていてもよかったのではないかと不思議に思えます。
 
入札で試験料が一番安い検査機関に試験を委託すると、技術的な未熟さなどから「陽性の結果が陰性として報告」されることが危惧されます。委託者にすると「陰性の結果が欲しい」のですから、技術的に未熟で安い機関に試験を委託していれば表面上の面倒はなくなる訳です。このような試験結果を3年間保管していても何の意味もないし、万が一に事故が発生した場合の責任は何処にあるのでしょう。
 
保健所は責任のある立場になりましたから、前保健所としては、事故が起こる前に営業者に具体的な指導をする必要があります。ところが具体的になにが危険で何が安全なのかが判りにくいために、一派一絡げにして「危険性のある装置はPL法に抵触する可能性があり、また経済性と便利さを優先して危険な装置を使用するとことは刑事責任を免れないこと」を理由に、面倒な装置の使用を制限したくなります。
 
環境の微生物を取り扱う業または術者に対する資格や義務などは存在しません。なにも知らない者が試験してもとがめられる規則はないのですから、誰が試験を担当しても良いわけです。これでは人の命にかかわる問題としては少しおかしいと思います。何でもかんでも規制することはよろしくないと思いますが、知識や技術が確りしていて、信頼に堪える試験機関でないと困るわけです。レジオネラ菌による事故は、この通達でなくなりましょうか。皆さんはどのように考えられますか、ご意見をお寄せください。
 

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