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327. 風疹ワクチン接種率の低下. 8-28-2003.
 
風疹は別名「三日ハシカ」とも呼ばれ、軽いハシカのように思われているふしもありますが、妊娠初期の妊婦が感染すると死産、流産からはじまり先天性の奇形を生む確立が非常に高くなる恐ろしいウイルス性の病気です。風疹の奇形児出産を抑制するために妊娠が可能となる年齢の女子中学生に風疹ワクチンを強制的に接種する政策が国内ではこれまでとられてきました。
 
ところが1995年におこなわれた予防接種法の改定によって、風疹ワクチンの女子中学生への集団接種は中止となり、1才から7.5才にのみワクチン接種が実施されることにきまりました。7.5才から中学生については2003年9月30日まで個別接種が行われていますが、風疹の怖さを知らない中学生の風疹ワクチン接種率は激減しているようです。2003年9月30日以降は任意接種ですから保健所に行ったとしてもワクチン代などを個人で支払うことになります。
 
19才から20才の医療系学生を対象に風疹抗体の保有率を調べ、1995年の予防接種法改定前後での比較をした成績が臨床ウイルス学会総会で報告されています。その概略を紹介します。
 
1977年と1978年に生まれた改正前の人達の抗体を持たない抗体陰性率は3.4%でありましたが、1980年から1983年に生まれた改定後の人集団では抗体陰性率は14.1%に増加しているそうです。抗体陰性者とは、生体を守る免疫がないのですから感染を受けやすい者、すなわち感受性者を意味します。
 
ある中核都市の子供たちの風疹の既往歴とワクチン接種率も調べられました。対象者は幼稚園、小学校、中学校への入学時の11,365人でありました。入学時にワクチンの接種を受けていたのは、幼稚園で80.4%、小学校で63.2%と中学校では33.1%でありました、抗体を持たないので感染する可能性がある感受性者率は幼稚園で14.0%、小学校で21.8%と中学校では35.2%に減少していました。
 
これらの結果から、風疹ウイルスに対する感受性者率が増加していることは、風疹の流行と難聴や心臓奇形などの先天性風疹症候群の誕生が危惧されるため、ワクチン接種率を高める努力が必要であるとの結論のようです。
 
妊婦が風疹に罹るとお母さんのお腹の中にいる胎児が生まれる前から風疹ウイルスの感染を受ける状況、すなわた「子宮内感染または垂直感染」を受けて先天性風疹症候群で生まれてくる可能性が高くなるのです。このことは、妊婦が感染しなければ奇形は生まれないのですから妊婦は、自分個人の健康の維持と同時にこれから生まれてくる子供の健康のために、風疹ワクチンの接種が必要なのだと思います。「転ばぬ先の杖」です。病気を含め今後は全ての責任を本人個人が負う体制に移行しつつあるようです。

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