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337. 科学解説のプロの養成. 11-14-2003.
 
「科学解説のプロ養成、文部科学省 専門大学院の設置提案」という見出しの記事が平成15年11月12日の新聞に掲載されていました。詳細な内容が判らないので、あまり短絡的に批判めいたことは言うべきでないかもしれませんが、私には少し考えることがある内容でした。
 
現代社会で生きていくためには、科学や技術の基本的な理解が不可欠だが、日本人、特に20〜30歳代の科学に対する理解度が欧米に比べて低く、中学生の理科離れも進んでいる。そこで文部科学省の科学技術政策研究所は12日、市民に科学をわかりやすく解説する「科学コミュニケーター」を養成するよう求める報告書をまとめた。専門の大学院を設置し、「科学と社会の橋渡し役」の養成を目指すという趣旨のものでした。
 
10年以上まえになりますが、バブルがはじける前に「理科好き子供を育てる財団」の設立を本気で考えていたことがあります。身近な心あるひと人々に「設立趣意書」なる必要性を書いた文書を配布していました。残念ながらバブルが弾けてしまいましたので、発起人会も開かれないまま自然消滅となりました。
 
≪子供も大人も年齢に関係なく原則的に「理科または実験」が嫌いな人は少なく、基本的には皆が好きで興味をもっている≫というのが私の原則的な認識です。ところが教育が悪いため、理科や数学が理解できなくなり、短絡的に嫌いと思い込んでいる児童や生徒が多いのだと思います。
 
60歳代の人には、パソコン、電子レンジ、ビデオ、携帯電話などの操作が苦手な人がいます。ところが携帯電話、ゲームやパソコンなどをイジクルことが苦手な子供はいないのです。最先端の技術であろうと伝統的な道具であろうと、「触るな」と言っても夢中になるのです。
 
20〜30歳代の人にアンケート調査した結果、これからもう一度やり直したい事柄があったら書いてくださいとの問いに対して、一番多い希望は「もう一度勉強をやり直したい」と言うのです。若いときに勉強しなかったことを反省しているのです。
 
低学年の算数が判らなくなる生徒が多くいるようです。時計の12進法の説明や分数の加減乗除の問題がなんとなしに実感がつかめないうちに次に進んでしまい、二度と同じ説明をうけられないのです。例えば、「二分の一割る三分の一はいくつですか」との分数の割り算は、計算の仕方を覚えていれば丸を貰えます。例え丸を貰っても、どうしてそのような計算をするのか、更には分数の割り算とはどのような意味があるのか、どのようなときに利用しているのかなどについては全く判らないようです。人が生きていく上で利用することもなく、なんの意味のないことを教わっていると思っているかのようです。
 
「二分の一割る三分の一を実生活で使ったことがありますか」と大人に聞いても「ありません」と殆どの人が応えます。分数の割り算であっても日常生活で無意識に使っていることは決して無い訳ではありません。例えば、大きなスイカやデコレーションケーキを半分(二分の一)に切り、その半分を3人(三分の一)で食べるとしたら、スイカまたはデコレーションケーキ1個の何分の一を食べることになるのでしょうか? このような問題ならば応えられるはずです。
 
理科の時間に実験をしながら指導する高校はそれなりの生徒の学校で、秀でた進学校の生徒は実験などをしなくても文字から理解できるので全く実験指導は行わない、と聞いたことがあります。試験のための知識を切り売りしても、理科の面白さは伝わらないと思います。
 
ゆとりある教育などと格好のいいことを言わないで、「理科は面白い」と感じさせる授業を小中学校で展開すれば、新聞に発表されていたような科学と社会の橋渡し役を務める「科学コミュニケーター」などを養成する必要はないものと私は思います。このような職域の専門家を養成すること自体は悪くはないのですが、それよりも大切なことを忘れていませんかと言いたいのです。企業の広報活動や政府の知的所有権の世界戦略を担当する哲学の素養のある科学コミュニケーターの教育を是非とも実施して貰いたいと思います。皆さんはどのようにお考えでしょう。

二分の一割る三分の一はいくつですか」との説明に、「大きなスイカやデコレーションケーキを半分(二分の一)に切り、その半分を3人(三分の一)で食べるとしたら、スイカまたはデコレーションケーキ1個の何分の一を食べることになるのでしょうか?」との事例を使いました。これに対して、  この例は、「二分の一割る3」であって「二分の一割る三分の一」ではないとの指摘をうけました(坂田明治氏、平成16年2月18日)。間違った例を挙げてしまったことをお詫び申し上げます。

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