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348. アルツハイマー病のワクチン.2-10-2004.
 
老人性痴呆の1種にクロイツフェルト・ヤコブ病(ヤコブ病と略称)という伝達性の難病があります。この疾患はプリオンによって引き起こされることから狂牛病(BSE)などと一括してプリオン病と呼ばれます。このヤコブ病は、全世界各地に分布し、患者の発生率は国民総人口の100万人につき毎年1人ていどの割合となっています。日本の人口は、1億2千万人ですから、毎年120人程度の割合で患者が発生している計算になります。
 
一方、アルツハイマー病と呼ばれる痴呆は、日本国内に100万人近くの患者が存在すると言われています。アルツハイマー病は、プリオン病のように実験動物やヒトにうつり広まることはないのですが、非常に患者が多い病気です。アルツハイマー病の脳組織には、老人斑と呼ばれる穴のような特殊な形態が出現し、そこにはアミロイドと呼ばれる物質が見つかっています。アミロイドは、健康なヒトでも常に作ら分泌されていますが、速やかに分解されてしまい蓄積はしないようです。ところがアルツハイマー病は、老人など何らかの理由によりアミロイドの生産が亢進するか、または分解されるのが低下しアミロイドが脳に蓄積するのが原因でないかと考えられています。また家族性アルツハイマー病の研究から、アミロイドの前駆体タンパクが見つけられ居ています。アミロイド前駆タンパクからアミロイドが作られ、アミロイドが分解されずに凝集して脳に沈着してアルツハイマー病の症状をおこすらしいのです。
 
このような背景から、アルツハイマー病はアミロイドの脳組織への沈着を抑制できれば予防できるのではないかと考えられています。そこでアミロイド沈着を抑制しようというワクチン療法の可能性が検討されています。国立療養所中部病院の原英夫博士などの研究グループは、副作用のほとんどないアルツハイマー病に対する飲むワクチンの開発に成功し、実験動物のマウスでの有効性を確認しているようです(Medical Tribune 2003年8月21日)。
 
自分では増殖できない特殊なウイルスにアミロイド遺伝子を担がせ、それをマウスに経口的に投与し、腸管細胞に感染させます。4週間後にアミロイドに対する抗体産生がピークに達し、半年ちかくも産生され続けるようです。この抗体は、アミロイド凝集を抑制することが認められました。その結果、ワクチン投与マウスでは、アミロイド沈着、老人斑形成の抑制に有用であることが示唆されました。
 
これらの成績を踏まえて、サルを用いた実験の申請中で、その実験で安全性、有効性と副作用を検討したうえで、臨床試験に進む予定とのことです。
 
この研究が期待通りの成果を上げられると、アルツハイマー病の起こる原因がより詳細に明らかにされる前に、予防法が先に確立される可能性も期待できます。世界的に多い痴呆であるアルツハイマー病の予防ができるようになるとしたら、そのワクチンの開発は人類の健康維持や生命活動に対して計り知れない貢献をするものと大きな期待が寄せられています。

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