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385. 風邪とインフルエンザ. 1-29-2004.
 
曖昧模瑚をよく読んでくださっている方のお一人から、1月24日付のメールを受け取りました。内容は、一般論として「インフルエンザでない風邪は大したことがない」と思っている人もいると言うものです。そのメール文の言外に「風邪を甘く見ない」ようにする啓蒙教育が足りないからで、それは専門家の努力不足であると言っているように私には感じられました。とりあえず、その人のメールをそのままここに貼り付けて、皆様の目に触れるようにします。
 
メールにあった本文
この冬は、まだあまりインフルエンザが流行っている様子はなく、今の所目立った動きはないようです。毎年、風邪の時期になると少し合点の行かないことがあり、今回は「それは何か」を考えてみました。風邪のシーズンになる少し前位から、「(ただの)風邪とインフルエンザは違う」という話が出てきます。確かにインフルエンザの方が症状もきつく、風邪と分けて考えるべきでしょうが、この結果、「風邪は大したことがない」と思っている人までいます。風邪とインフルエンザを区別しない人も問題でしょうが、風邪とインフルエンザを区別して風邪は大したことないと考えるのも問題です。
 
風邪の症状そのものは大した事ないかも知れませんが、それは体力のある人であって、体力のない人にはきついと思います。また、症状があまりきつくなく動き回れますので、風邪の病原体をばらまくことになります。実際、医者に行くと、いま流行ってる風邪がどのようなものか知ることができます。ということは恐らくはその風邪の病原体と同じものに罹った患者が目立つほどきているということでしょう。つまり、インフルエンザほど急激にきつい症状はでないかも知れませんが、大規模に流行していることになります。しかも、症状が重くないとはいえ、やはりきついものがありますし、行動が制約を受けることも確かです。その上、治りが悪いとあっては、じわーっときて、その瞬間で見れば大した事がなくても、全体でみれば大きな被害となります。
 
考えをまとめると、風邪とインフルエンザを区別する事に異論はありませんが、風邪を甘く見ない方がいいということです。つまり、風邪もインフルエンザ同様に警戒を怠らないとなりましょう。風邪とインフルエンザの違いを教育するところ始めて、その区別が解った段階で終わりにすることなく、風邪も実は問題であり、十分な警戒が必要であるところまで進めるべきだと思いますがいかがでしょうか。終わり
 
ただの風邪とインフルエンザの違い
「ただの風邪とインフルエンザは違う」という意味を私なりにここで考えてみましょう。砂糖と食塩の違いは誰でも知っています。その場合に「砂糖と食塩のどのような性状または条件」などの何についてかを明確にしなで論じますと、間違いでなくても違うことを想定して禅問答よろしく珍妙な答えをだしてしまう可能性がありそうです。
風邪は英語でcommon coldと書き、まさにただの風邪なのです。通常はライノウイルスRhinovirusによる流れるように水溶性の鼻汁がでる鼻炎Rhinitisを指しています。ところがインフルエンザはinfluenzaまたは単にFluと書いたり言ったりします。皆さんご存知のように、原因ウイルスは、Influenza virusでRhino virusではありません。屁理屈になりますが、ただの風邪とインフルエンザの病名と原因ウイルスを英語で表現すると確かに違うのです。
テレビ番組などに感染症またはウイルスの専門家が出演して、「風邪とインフルエンザは違います」と発言したとします。この先生が仮にウイルスの専門家であったとすると、風邪とインフルエンザを起こすウイルスは違いますという意味で違いを説明したのかもしれません。もし臨床のお医者さんであったと仮定すると、風邪とインフルエンザの症状とその軽重は違いますと症状の違いを説明したのかもしれません。言外に「ウイルスの種類」や「症状の軽重」はとの言葉がないと何が違うのかは理解するのが本当は難しくなります。その番組を見ていた人の一部は、自分流に勝手に意味を補いながら解釈しているので疑問がなく判ったような気分になることもありましょう。
 
何が違うのか
風邪とインフルエンザとは違い、風邪は大したことがないという意味は、病気の怖さでの意味合いで、病原ウイルスの違いではないでしょう。このように考える、風邪とインフルエンザの症状の違いを説明するのは、ここでは臨床のお医者さんに任せましょう。私なども安易に「ただの風邪とインフルエンザとは違う」との表現を使ってきた気がしますが、なにがどうして違うのかに触れることが必要であることを教えられた気がします。
一般の人が「かぜ」と表現した場合の「かぜ」は、必ずしもライノウイルスによる鼻炎を意味しているとは限りません。それと同様にいわゆる「かぜ」には、実に様々な症状や病気があります。
かぜ様の症状を起こす原因体は、ウイルスや細菌など多くがあげられます。例えば、HIVに感染してまもない期間内では、かぜ様の症状を呈し、エイズに特徴的な症状や検査結果がみられことはないと思います。上気道はホコリやバイキンを含む空気の出入り口で、寝ているときでも呼吸はしているのですから、かぜ様な症状をみて病原体(または原因)を特定することは難しいようです。
かぜはインフルエンザよりは軽症に経過するケースが多く、死亡する人の割合はかなり低いと思います。それでも微熱、止まらない鼻汁、しつこいセキなどで悩まされることは珍しくありません。学校や職場を休むことやお医者さんに通うことになりましょう。軽い症状のかぜであっても、罹らないことが望ましいことです。
 
ただ微生物屋が不可思議に思うことは、風邪は一晩でティシューを一箱も使ってしまうほどに鼻汁がでますが、数日で治ってしまうことが多いようです。ところがインフルエンザは、高熱にくわえて全身に筋肉痛や倦怠感がありますが、鼻汁が流れるほどにはでません。更に細菌との混合感染を受けると重篤な肺炎を併発して死亡することもあるのです。怖い病気がそれほど怖くないのかの違いとは別に、ライノウイルスはどうして鼻汁をださせるのでしょう。ウイルスの違いによる症状の違いの原因を知りたいのです。

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